2022 Fiscal Year Research-status Report
Exploring dynamic pictures of supermassive black holes with movie reconstruction from event-horizion-scale observations
Project/Area Number |
19KK0081
|
Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
本間 希樹 国立天文台, 水沢VLBI観測所, 教授 (20332166)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
笹田 真人 広島大学, 宇宙科学センター, 特任助教 (10725352)
池田 思朗 統計数理研究所, 数理・推論研究系, 教授 (30336101)
|
Project Period (FY) |
2019-10-07 – 2025-03-31
|
Keywords | 巨大ブラックホール / 超長基線電波干渉計 / 動画解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は本研究の最重要研究対象の一つである、天の川銀河の巨大ブラックホール・いて座A*について、EHTの観測の最初の成果をまとめて出版した。主たる結果は静止画像であり、光子リングとブラックホールシャドーを検出して、当該天体がブラックホールであることの視覚的な証拠をとらえることに成功した。この結果は2022年5月に国際共同記者発表によって世界に配信され、多くのメディアで取り上げられるなど、広く一般にも浸透した。 この解析にあたっては、動画化の可能性についても検討し、その解析状況についても一部論文に記載している。ただし、現在のデータでは情報不足のために動画解を一意に定めることが難しいと判明しており、確実な動画解の提供には至っていない。そのため、動画化に変わる新たなアプローチとして、時間変動する成分を平均画像に対する雑音的変動として扱うNoise Modelingという手法を導入し、動的な成分の静止画への影響を評価して、それを静止画撮影にフィードバックしている。この中で、時間変動成分を含む種々の情報をシミュレーション結果と比較した結果、比較的降着率が大きくジェットが出やすいモデルを示唆することがわかった。実際のいて座A*ではジェットが見えていないため、この原因の解明が次の興味深い対象であり、動画化を目指す中で新たな科学的知見が得られた。 一方、M87については、EHTの2018年度のデータ解析を進めた。すでに画像を得て2017年の結果との比較を進めており、現在論文としてまとめつつある。また、M87については、東アジアVLBI(EAVN)などの長期モニター観測から、ジェットの時間変動研究も進めている。それによって、ジェット軸の準周期的(10年程度)な時間変動を検出することに成功し、シミュレーションとの比較に基づいてその解釈を進めた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
成果集約面では、いて座A*の画像が発表されて大きなニュースになっており、また、動画化そのものは実現していないものの、動的成分に関する評価が新たな科学知見を生み出すなど、手法面および科学面で十分高いレベルでの進捗があった。さらに、M87についてはEHTによる2017年と2018年の画像比較やEAVNによるジェットの長期モニター観測により、時間変動の解析が実現しており、次年度以降の成果のとりまとめが予定されている。また、2022年度もEHTのキャンペーン観測やEAVNのフォローアップ観測が順調に実施されており、今後の詳しい解析に向けたデータの蓄積も進んでいる。これらの状況から進捗状況はおおむね順調であると判断する。
|
Strategy for Future Research Activity |
いて座A*の動画可に向けたシミュレーションを継続し、現在の観測局配置での限界と今後必要となる追加局の数や場所などについても検討を進めるとともに、EHTやEAVNなどの実データに基づく動画解析を進める。また、今後のEHT観測の鍵となるALMAの観測参加機会を増やすことを目指して、ALMAのTotal Power Array活用の可能性有無についても関係者と検討を開始する予定である。さらに、M87のジェットの動画撮影とそれに基づくブラックホール研究についても推進し、特にジェット軸の準周期的歳差運動の解釈について結果をとりまとめる予定である。
|
Causes of Carryover |
2022年度も新型コロナ感染症による海外渡航制限の影響を受けたため、国内および海外出張について必要最小限に抑えた。2023年以降は状況が改善されると見込まれるので、2023年および2024年にこれまで控えていた海外渡航等を活性化させる予定である。
|
Research Products
(15 results)