2023 Fiscal Year Research-status Report
Exploring dynamic pictures of supermassive black holes with movie reconstruction from event-horizion-scale observations
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19KK0081
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Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
本間 希樹 国立天文台, 水沢VLBI観測所, 教授 (20332166)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
笹田 真人 広島大学, 宇宙科学センター, 特任助教 (10725352)
池田 思朗 統計数理研究所, 数理・推論研究系, 教授 (30336101)
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Project Period (FY) |
2019-10-07 – 2025-03-31
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Keywords | 巨大ブラックホール / 超長基線干渉計 / 動画解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、本研究の最重要ターゲット天体の一つであるM87について、Event Horizon Telescope(EHT)によるホライズンスケールの観測および、東アジアVLBI観測網(EAVN)によるジェットの観測の解析を進め、時間変動解析から得られるブラックホールの描像について成果を論文としてまとめた。 前者については、2018年4月に実施されたEHT観測によるM87の画像を得て、2017年の結果と比較した。その結果、リング状の構造の中心にブラックホールシャドウが存在する基本的構造は不変であると確認された一方で、リング上の最も明るい場所については有意な変化が見られた。さらに、理論モデルとの比較から、この変動はブラックホールに落下するガスで期待される電波の強度変動で説明できることが示された。この結果は、EHTの観測を継続してブラックホールを動画化することの重要性を改めて示すとともに、M87の"2コマ目"が得られたことで動画化の第一歩を踏み出すこととなった。 一方、EAVNを中心とするジェットの時間変動については、過去のアーカイブデータも含めて20年分の解析を実施することで、ジェットの吹き出す方向が10年程度の周期で歳差していることが明らかになった。そして、理論モデルとの比較から、ブラックホールの自転軸と降着円盤の回転軸がずれている場合に発生するLens-Thirring歳差で解釈できることを示した。この結果は、ブラックホールの自転の可能性を強く支持するものであり、動画解析がブラックホールの性質の解明に重要な役割を果たすことを実証した。 上記に加えて、将来を見据えた新たな動画解析手法の検討として、最適輸送(optimal transport)を制約とする画像解析手法の開発に取り組み、コード開発を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度はM87の動画解析で、ブラックホール周囲のガスの強度変動に起因する時間変化や、降着円盤の歳差に起因すると考えられるジェットの歳差などが観測的に明らかになり、それらの結果が論文として発表された。これらの結果は、動画解析で時間変動を追いかけることがブラックホールの理解に大きく貢献することを改めて示すインパクトの高い成果であり、このような成果の産出状況から研究の進捗は順調であると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後もEHTやEAVNなどのデータ取得を継続してさらなる成果産出を目指すとともに、これまでの干渉計の基本的枠組み(10時間程度の観測時間内での画像不偏性の仮定)を超えた解析手法の確立を進める。さらに、それを用いた画像解析にも挑戦し、ブラックホール研究に新たな局面をもたらすことを目指す。また、研究の最終年度であることから、本研究終了後の研究展開についても検討を進める。特に今後のブラックホールの詳細観測を進める上で重要となる、ミリ波帯のスペースVLBI衛星の実現可能性についても国際協力のもと検討する。
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Causes of Carryover |
過去数年に渡る新型コロナ感染症による大幅な海外渡航制限を受け、現在もその影響が残っているため。 これまで控えてきた、ハワイなどのEHTサイト現地での観測運用や国際会議の参加、海外機関への滞在などを実施する。
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