2020 Fiscal Year Research-status Report
骨転移性がんの移動・浸潤におけるコラーゲン代謝の解明と治療薬創出
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19KK0194
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
稲田 全規 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80401454)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
富成 司 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 特任助教 (50734878)
平田 美智子 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (40544060)
浅野 竜太郎 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80323103)
塚越 かおり 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20708474)
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Project Period (FY) |
2019-10-07 – 2023-03-31
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Keywords | 癌転移 / コラゲナーゼ / MMP |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではがん骨転移の根幹である、がん細胞が産生するコラゲナーゼによる骨コラーゲンの分解に伴う剛性変化によるがん細胞の移動調節のメカニズムを明らかにすることである。さらに、分子標的薬である特異抗体にコラゲナーゼ感受性を導入して、がん転移の治療を目指した国際共同研究を実施することである。今年度は、海外渡航の制限があったため、デイスカッションはオンライン、各項目の実験は実施機関で相談の上に実施した。項目①がん細胞の移動におけるマトリックス分解酵素の役割解明では、研究代表者の稲田、富成特任助教は作成したコラゲナーゼ発現細胞、及びコラゲナーゼ非発現細胞の標的遺伝子として、MMP-13、および/または、MT1-MMPをサイレンシングして、移動様式と移動距離の測定を実施した。項目②低分子人工抗体の開発として、分担研究者の浅野准教授と若手研究者の塚越助教は、がんの分子標的であるHerを標的とした抗体の高精度化を計った。さらにオックスフォード大学海外研究者とオンラインで議論して、がん細胞移動・浸潤への有効性評価を確認する準備を進めた。項目③がんの細胞浸潤とマトリックス分解酵素の役割解明では、 オックスフォード大学のItoh教授らが、コラゲナーゼ発現細胞、及びコラゲナーゼ非発現細胞を用い、コラーゲンコート(2D)上のがん細胞移動実験を行い、異なった硬度のコラーゲンゲル上(チャンバー)上の細胞移動の測定解析を実施した。これらより、オックスフォード大学と東京農工大学の研究者はオンラインで議論して、がん細胞移動・浸潤への有効性評価を確認する準備を進め、大学院生はがん細胞移動解析を実施した。今年度の各実験項目の実施により、剛性が異なるコラーゲンによる骨転移性がん細胞の移動に与える影響を解析した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、海外渡航の制限があったため、デイスカッションはオンライン、各項目の実験は実施機関で相談の上に実施した。今年度の進展は、項目①がん細胞の移動におけるマトリックス分解酵素の役割解明では、基盤技術である、がん細胞移動におけるコラゲナーゼ発現細胞、及びコラゲナーゼ非発現細胞の精度検定を行なった。遺伝子発現はウイルスベクターにて行い、発現確認はqPCR法及びウエスタンブロッティング法により判定した。これら細胞を用いて、細胞の移動様式と移動距離を測定した。項目②低分子人工抗体の開発では、がんの分子標的であるHer, ALKのがん特異抗原を標的とした抗体の高精度化を行なった。Herは二量体化によるリン酸化促進の報告があり、特異抗体の設計を変更した。抗体のコラゲナーゼ感受性配列の導入を決定し、コラゲナーゼが切断する抗体を完成させた。現在、機能性実験の実施に向けた抗体の浸透試験への適用を進め、次年度の実験に備える。項目③がんの細胞浸潤とマトリックス分解酵素の役割解明では、先述のコラゲナーゼ発現細胞、及びコラゲナーゼ非発現細胞を用い、コラーゲンコート(2D)上の移動検定を行なった。コラーゲンゲルやコラーゲンコートの条件可変検討を行い、スクラッチアッセイや細胞遊走アッセイを参考として、定量的な細胞移動度の測定が可能となった。これらより、オックスフォード大学と東京農工大学の研究者はオンラインで議論して、がん細胞移動・浸潤への有効性評価を確認する準備を進め、大学院生は2次元及び、3次元コラーゲン内のがん細胞移動解析を行なった。これら、今年度における実験の進展は、当初計画に沿った順調な結果であり、剛性が異なるコラーゲンによる骨転移性がん細胞の移動に与える影響を解析することが可能となった。これら研究成果は次年度研究計画を円滑に進める上で必須な結果であり、今年度計画は概ね順調な進展を示している。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度の研究実施計画は、以下①~③の項目によって東京農工大学(日本)、オックスフォード大学(英国)の双方で共同研究を継続推進する。現在、海外渡航の制限があるため、デイスカッションはオンライン、各項目の実験は実施機関で相談の上に実施する。項目①がん細胞の移動におけるマトリックス分解酵素の役割解明では、研究代表者の稲田、富成特任助教はがん細胞移動におけるコラゲナーゼ発現細胞、及びコラゲナーゼ非発現細胞を用い、コラーゲンコート(2D)の濃度と剛性を可変させ、MMP-13、に加えてMT1-MMPサイレンシングおよび強制発現細胞を用いた試験を行う。項目②低分子人工抗体の開発では、分担研究者の浅野准教授と塚越助教は作製した抗体を用いてがん細胞移動・浸潤への有効性評価を解析する。項目③がんの細胞浸潤とマトリックス分解酵素の役割解明では、Itoh教授らとともに若手研究者が変異細胞の細胞移動の3D解析を実施する。研究計画の目標として、研究代表者が有する骨転移性がんモデルマウスに英国オックスフォード大学で確立されたコラゲナーゼ遺伝子変異がん細胞を用い、骨転移におけるがん細胞の移動・浸潤を解析する基盤を構築する。抗体作製の専門家である浅野准教授と若手研究者である塚越助教らは、コラゲナーゼによって活性化される低分子人工抗体の作成と最適化に着手し、特異抗体の機能と薬効評価を目指す。さらに、In vivo実験系を構築することにより、コラゲナーゼ感受性および非感受性がん特異抗原認識抗体の双方の効果解析を進め、骨転移した骨転移性がん細胞におけるコラゲナーゼ活性の依存度と新規抗体による治療効果の実証を行う。コロナウイルスによる時勢が好転すれば、研究チームの交流を活発化させ、若手研究者、院生の英国への派遣と、海外研究者の日本への招聘により共同研究を活発化する。
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Research Products
(26 results)