2019 Fiscal Year Research-status Report
Brain-bone marrow interaction in stress-induced hypertension and the protective effects of exercise training
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19KK0251
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
和気 秀文 順天堂大学, スポーツ健康科学部, 教授 (50274957)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
グホ サビン お茶の水女子大学, 理学部, 学部教育研究協力員 (30453179)
山中 航 順天堂大学, スポーツ健康科学部, 助教 (40551479)
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Project Period (FY) |
2019-10-07 – 2024-03-31
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Keywords | ストレス / 高血圧 / 運動 / 扁桃体 / 視床下部 / 骨髄 / 炎症 / ミクログリア |
Outline of Annual Research Achievements |
長期間の心理社会的ストレス暴露は高血圧の発症を促し、放置すると脳卒中や心筋梗塞、最悪の場合は突然死を招く危険がある。しかしストレスが高血圧症を引き起こす機序は不明である。慢性ストレスでは、骨髄由来の炎症細胞が活性化し、扁桃体中心核や視床下部室傍核 に集積してミクログリアとなることが報告されている(脳・骨髄相関)。申請者と海外共同研究者はこれらの神経核群の興奮は血圧を上昇させることを明らかにした。以上より本研究では、「慢性ストレスによる高血圧の発症は、脳・骨髄相関に起因した“扁桃体-視床下部系の炎症”による」という仮説を立てた。この仮説を検証するために、本研究ではストレス依存性高血圧モデルにおける扁桃体、視床下部および骨髄の分子神経科学的特徴について明らかにする。また運動習慣による、脱ストレス・抗高血圧効果の機序についても同様に調査することを目的とする。本年度は拘束ストレスや運動習慣が左右扁桃体ならびに視床下部遺伝子発現に及ぼす影響について検討した。ストレスに対する扁桃体遺伝子発現パターンには明らかな左右差を認めた。遺伝子オントロジー解析の結果、左に対し右扁桃体では、サイトカイン関連因子の遺伝子発現変化が顕著であり、また運動によりその多くは対象群の水準まで回復した。一方、左扁桃体もストレスにより多くのサイトカイン関連因子の遺伝子発現に変動を認めたが、運動習慣による修飾・改善はほとんど見られなかった。一方、視床下部については、ストレスによってサイトカイン関連因子の遺伝子発現パターンに大きな変化はみられなかった。以上よりストレスによる炎症反応と運動による修飾効果は脳部位特異的であり、特に運動による抗ストレス効果には右扁桃体が関与している可能性が示唆された。また本年度はテレメトリーシステムを導入し、ストレスと運動が自律神経性循環調節機能に及ぼす影響について調べる予備実験も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題は年度途中から採択されたものであるため、本年度は多くの実験を実施することはできなかった。しかし慢性ストレス負荷や抗ストレスとして運動を実施させた際の視床下部や扁桃体の網羅的遺伝子発現解析については当初の計画通りに実施することができた。一方、年度末の3月にフロリダ大学で実験を行う予定でいたが、COVID-19による影響を受け渡米できず、骨髄に着目した研究が進まなかったため、総じて(3)やや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の実験を継続する。ラットを4週間拘束し(1時間/日、毎日)、慢性ストレスモデルを作製する。拘束ストレスは物理的 ストレスであると同時に強力な心理的ストレスを誘発し、申請者らはこの手法により安静時血圧が有意に上昇することを既に確認している。一方、ストレスを課しても、回転かご付きケージで飼育を行ったラットでは血圧が上昇しないことも確認している。本研究では 、ストレスを負荷しない対照群、ストレス群、ストレス+運動群およびミクログリアの活性を抑えるミノサイクリン(Santiste ban et al. Circ Res 2015)投与群の4群に分け、飼育期間終了後、各対象脳部位(視床下部など)のRNAを抽出し遺伝子発現を網羅的に調べ(一部の実験は前年度に実施済み)、また、炎症性因子を中心としたパスウェイ解析(Pathway Studio解析など)やエピゲノム解析を行う。さらに同定因子のタンパク質発現量を定量し、かつ炎症細胞(骨髄由来ミクログリアを含む)や炎症性因子等について、免疫組織化学的手法を用いて扁桃体中心核や視床下部室傍核を含む脳領域での発現局在について明らかにする。なお、飼育期間中の血圧はテレメトリーシステムにより、ストレス応答については血漿コルチゾールの測定により評価する。遺伝子発現解析実験は主としてGouraudが、生理機能実験と免疫染色は主として和気、山中、および大学院生が行う。また、同じラットより血液および大腿骨・脛 骨の骨髄を採取しておき、フロリダ大学において遺伝子・タンパク質発現解析、エピゲノム解析、さらにフローサイトメトリー法により各炎症細胞への影響について調べる。本実験は和気、山中、Gouraudおよび大学院生がフロリダ大学で行う予定である。
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Causes of Carryover |
2020年3月に代表研究者と2名の分担研究者と共にフロリダ大学で実験を行う予定を立てていたが、COVID-19による感染拡大の影響を受け、急遽渡米を断念することになった。既に航空券及び滞在先も確保していたが、キャンセル料が一切発生しなかったため、旅費等の次年度使用額が生じてしまった。COVID-19の影響で令和元年度に実施できなかった研究を次年度に予定していた研究と併せて実施する予定であるため、この予算を翌年度分として請求した助成金と併せて使用する予定である。
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Research Products
(7 results)