2021 Fiscal Year Research-status Report
Dynamics of Inclusion and Exclusion in Urban Informality: The case of Thailand
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19KK0318
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
遠藤 環 埼玉大学, 人文社会科学研究科, 教授 (30452288)
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Project Period (FY) |
2020 – 2022
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Keywords | インフォーマリティ / メガ都市 / アジア / タイ / ジェントリフィケーション / 格差 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の課題は、タイ・バンコクを事例に、インフォーマリティを巡る包接と排除のダイナミズムとその衝突の様相を明らかにすることである。都市における生産・再生産の議論を架橋するための新しい理論的アプローチを模索・構築しながら、バンコクにおいて詳細なフィールド調査を実施し、基課題(基盤研究A:「インフォーマル化するアジア」)に実証的基盤を提供することを目指している。 2021年度の実績は以下の通りである。第1に、何度も延期となっていた海外渡航が実現し、ロンドンスクールオブエコノミクス(LSE)には4-6月の2ヶ月間、チュラーロンコーン大学には1-3月の2ヶ月間、それぞれ客員研究員として訪問した。第2に、これらの渡航期間に理論的サーベイ(LSE)、実態調査(バンコク)、学術交流・共同研究の打ち合わせを進めた。タイでは、コミュニティや政府機関、NPO等のインタビューなどを実施した。第3に、LSEでの客員期間の成果をふまえ、所属先のエッセイシリーズに、タイのデジタル・インフォーマリティに関するエッセイを寄稿した。またバンコクのジェントリフィケーションに関するワーキングペーパーを執筆した(2022年5月刊行予定)。2022年5月に開催される国際ワークショップでも発表予定である。第4に、タイにおいてはチュラーロンコーン大学の共同研究者と実態調査で共同するだけでなく、タマサート大学経済学部のNattapong先生らとバンコクの格差の実態に関する分析を、労働統計の個票を用いて進め、2022年5月開催の第14回国際タイ学会で報告した(2021年12月に開催予定であったが、コロナ禍のため延期された)。第4に国際ネットワーク強化の一環として、基課題が共催者となっている国際ワークショップにて、カウンターパートのHyun教授を基調講演に招聘した(感染状況によりオンラインに変更)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度より、コロナ禍のため何度も海外渡航や実態調査、対面での国際ワークショップを延期してきたが、2021年度にはようやく、キャンパスが再開されたタイミングで、LSEには2021年4月から2ヶ月、チュラーロンコーン大学には2022年1月から2ヶ月間渡航できた。コロナ禍が始まる前の本来の予定では、2021年度までにLSEに6ヶ月、チュラーロンコーン大学に8ヶ月間、客員研究員として訪問予定であり、特に後者はその間に本格的な実態調査を行う予定であった。残りの期間は2022年度に実施する方向で調整している。 以上のため、当初より予定はやや遅れているが、共同研究者や受け入れ機関の柔軟な対応によって、諸計画の変更にもかかわらず研究を進めることが可能となっている。第1に理論的サーベイについては、概ね順調に進んでいる。特にLSEに渡航できない期間(2021年10月~)もオンラインの在外研究員として、図書システムやワークショップなどに全てアクセスできるように調整して下さったため、LSEの各種学術リソースを日本からも活用できた。第2に、ミクロな実態調査は、タイへの渡航期間が短くなったことで遅れているが、渡航時にはコロナ禍における包摂と排除の実態に関しても調べることができ、貴重な訪問となった。コロナ禍の影響は無視できないため、共同研究者と議論しながら、調査内容の再調整をしており、2022年度に調査を継続予定である。第3に、日本にいても共同が可能な労働統計の個票分析は、タイの研究者とオンライン会議を頻繁に行いながら進めてきた。国際学会報告を経て、2本の論文を執筆予定である。第3に、前述の通り、国際ワークショップに、LSEの受け入れ研究者のHyun教授を招聘したほか、オンラインで国内外のインフォーマリティや格差に関する研究者にゲスト報告をしてもらい、学術交流を進めてきた。
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Strategy for Future Research Activity |
アジアの発展過程においては、生産領域と再生産領域の議論が切り離され、前者が常に優先されてきたことが広くは格差社会の助長を支えてきた。また、インフォーマリティを巡る新しい包摂と排除のダイナミズムは、コロナ禍という危機によってより先鋭化されている。そのため、今後の研究では、コロナ禍における影響に関する考察を追加する予定である。 2022年度は、第1に、バンコクでの実態調査を8月、および2023年3月など、数度に分けて実施予定である。また、LSEには10月から4ヶ月間、再び客員研究員として渡航し、理論的な検討を続ける。タイにおけるインフォーマリティの実態調査では、タイ人だけでなく、ミャンマー人労働者などの移民労働者に対してもインタビューを実施予定である。第2に、前述の通り、5月には2021年の成果を第14回国際タイ学会や国際ワークショップ(アジア経済研究所。およびオランダのIIASが主催、基課題の科研プロジェクトが共催)での発表、およびワーキングペーパー、論文2本の刊行準備を引き続き進める。第3に、2022年度に実施する調査を秋以降、国際学会で報告し、論文にまとめる予定である。第4に、LSEの受け入れ研究者のHyun教授や、タマサート大学のNattapong准教授らを招聘し、日本で国際ワークショップを開催することを予定している。
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Research Products
(5 results)