2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20001002
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Research Category |
Grant-in-Aid for Specially Promoted Research
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
末包 文彦 東北大学, ニュートリノ科学研究センター, 准教授 (10196678)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久世 正弘 東京工業大学, 理工学研究科, 准教授 (00225153)
川崎 健夫 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (00323999)
住吉 孝行 首都大学東京, 理工学研究科, 教授 (30154628)
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Keywords | ニュートリノ / ニュートリノ振動 / 原子炉 / 混合角 / Double Chooz / θ13 / 国際研究者交流 / フランス |
Research Abstract |
H23年11月に原子炉ニュートリノによる初めて有限のθ13の兆候を観測し、ニュートリノ研究に新展開を与えた.H24年は、Far検出器のデータ収集を続けると共に、解析の質を上げ、θ13の測定精度を改善した.また、3つの原子炉実験のベースラインの違いを利用したΔm2{31}の測定を行った. H24年7月に投稿し9月にPRDに掲載した第2論文では、sin22θ13 = 0.109±0.030(stat)±0.025(syst) の結果を出した.この他に、「原子炉ニュートリノによる最初のローレンツ対称性の破れのテスト」及び「原子炉OFFの期間のデータによるバックグランドの直接測定」の論文がPRDで掲載された.また、「原子炉実験のベースライン依存性を利用した最初のΔm2_{31}測定」及び「中性子の水素捕獲によるθ13測定結果」をarXivに投稿した.これらは査読付きジャーナルに投稿準備中及び投稿中である.H24年から東工大の石塚がDouble Choozグループ全体の解析のコーディネーターとなり、H25年夏の発表を目指してθ13の3回目発表のための解析を遂行中である. H24年9月の日本物理学会では、「最近のθ13の精密測定と期待される物理」のシンポジウムを企画し、RENO, Daya Bay から講演者を招いた.久世が全体説明を行い松原がダブルショーの発表を行い、末包がまとめの講演を行った.これは、本研究の「ニュートリノ物理の新展開」に関するものである. Near検出の建設に関しては、トンネルの掘削は終了し、内装の工事をしている.東北大でフランス人研究員を雇用し、H25年秋に予定している光電子増倍管の設置のための準備を行っている. 文部科学省・日本学術振興会発行の「科研費ニュース」H24年度vol1.の「最近の研究成果トピックス」に、本研究の成果が取りあげられた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
H23年に原子ニュートリノによるθ13測定をFar検出器だけで世界に先駆けて行い、今後のニュートリノ研究に新展開をもたらすという本研究の目標に大きく貢献した.今後は、Near検出器を建設し、θ13の測定精度を向上することが課題だが、Near検出器の建設がトンネル工事の遅延により遅れている.これは掘削工事にあたり、発電所からの要請で発破の頻度を計画より少なくしなければならなかったり、地盤が予想より脆弱で補強工事が必要であることが工事開始後に明らかになったり、など予期せぬ問題が生じたためであり、安全を確保するためにはやむを得ないことであった.フランスでは様々な規制が非常に厳しく適用されるが、そのおかげでこれまで事故なく工事が進んでいる. 一方物理解析は非常に順調に進み、θ13解析では、エネルギースペクトル解析を行ったり、コバリアント行列を用いてパラメーター間の相関を考慮に入れるなど、他の競合するグループでは行っていない高度な解析を行い、検出器1台で得られる最大限の成果を出している.このθ13測定以外にも当初予定していなかった、「原子炉OFFによるバックグラウンドの直接測定」、「ベースラインの違いを利用した世界初のΔm2{31}の測定」、「中性子の水素吸収信号による独立したθ13測定」などの成果を論文として発表することができた. したがって、本研究は時間的には遅れているものの、当初の計画以上の成果をあげつつある.
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Strategy for Future Research Activity |
θ13が比較的大きいことが分かったため、本研究の目的である「ニュートリノ物理の新展開」を導くという本研究課題の目標は達成できた.今後は、θ13測定の精度を向上し、Δm2{31}の測定を行う.H25年春から夏にかけて、統計と解析を向上したθ13測定の第3番目の論文とDouble Chooz 検出器の技術論文及び3つの原子炉実験の結果を詳細に組み合わせたΔm2{31}の測定の2番目の論文を執筆する予定である.Near検出器建設後は、θ13、Δm2{31}とも精度を飛躍的に向上することができる. Near検出器建設では、本研究グループ担当の光電子増倍管の設置及び校正装置の設置を行う.そのため、東北大でフランス人研究員を雇用し準備を進めている. H25年秋からフランスの現場で、光電子増倍管及び校正装置の設置及び調整を行う.その後首都大の前田が検出器全体のコミッショニングを行い、データ収集を開始する.これら一連の作業はFar検出器建設の際ひと通り経験しているので遅滞無く進めることができる.データ取得開始後は、統計精度と解析の質を上げ、θ13及びΔm2{31}の測定精度を上げて行く. θ13の大きさが判明したため、今後のニュートリノ実験計画を具体的に策定することが可能になった.原子炉ニュートリノによる質量階層性の決定、θ12の精密測定や、ステラエルニュートリノ検出実験などの検討を行い、その実現にむけて技術的検討を行う.それに関連して現在進行中の小型ニュートリノ検出器の開発を引き続き行う.また、原子炉実験と加速器実験と組み合わせて、CP非保存δ、質量階層性、θ23縮退などの問題の解決を探る.
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Research Products
(35 results)