2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20001007
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐藤 正明 東北大学, 大学院・医工学研究科, 教授 (30111371)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大橋 俊朗 北海道大学, 大学院・工学研究院, 教授 (30270812)
神崎 展 東北大学, 大学院・医工学研究科, 准教授 (10272262)
出口 真次 東北大学, 大学院・工学研究科, 准教授 (30379713)
坂元 尚哉 東北大学, 大学院・工学研究科, 助教 (20361115)
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Keywords | バイオメカニクス / バイオイメージング / 細胞外基質 / 細胞骨格 / 細胞内情報伝達 / Rhoファミリー / ストレスファイバ / メカノセンシング |
Research Abstract |
1.流れ負荷実験に基づいた細胞の応答機構 せん断応力勾配の感知機構を詳細に調べるため新たなチャンバを開発し、膜蛋白質と細胞間接着部位からのシグナルがMAPKおよびRhoGTPaseを介する可能性を指摘した。PDMS製マイクロピラーアレイを用いた実験により、流れ負荷に伴い変化する牽引力は内皮細胞の形態および構造と密接な関係があることが示唆された。ゼブラフィッシュ心臓の弁形成部位に発現するmiR-21が、血流に起因するせん断応力によって誘導、維持され、弁形成に不可欠であることを証明した。 2.張力負荷実験に基づいた細胞の応答機構 RNA干渉法によりpaxillinをノックダウンした内皮細胞において、paxillinが初期配向に重要な役割を果たしていた。細胞外基質の硬さ依存的な乳腺上皮細胞の形質転換、増殖促進に関与するRho-GEFの網羅的スクリーニングを行い、Wntシグナルにおいて細胞内平面極性に関与するWGEFを含む5種類の因子の同定に成功した。単離骨細胞に対する局所力学刺激実験により、細胞体部に比べて細胞突起部への刺激がNO産生応答に大きく影響していた。 3.細胞力学応答プロセスにおける細胞内シグナルの分子イメージング ストレスファイバに作用する力を薬剤によって低下させ、FRETイメージングによりRacl活性が上昇することを明らかにした。蛍光ナノ粒子を用いた独自の単一分子動態解析手法により、受容体刺激等によって惹起される細胞内シグナル伝達系とその生命応答であるGLUT4小胞輸送亢進を連結する機構を世界最高レベルの精度にて解析することに成功した。 4.ストレスファイバの力覚に果たす役割 マイクロパターン上に培養した単一細胞内のストレスファイバと応力の空間分布に高い相関があることを発見し、細胞内で力覚状態を一定に保つ張力ホメオスタシス現象のうちの「正の作用」が実在することを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた、細胞の力覚と想定していた部位への局所力学刺激装置の製作が軌道に乗らず、計画の若干の修正を行った。しかしながら、同等以上の機能を有する2種類の新たな装置の開発に成功した。1つは、流れ場内に空間的なせん断応力勾配を発生させ、細胞間接着部位へ力学刺激負荷を作用させることが可能となる新たなチャンバの開発であり、他の1つは細胞への流れ刺激負荷と同時に細胞の牽引力を計測可能な装置の開発である。これらの装置の活用により、従来想定していなかった細胞の力学応答の様子が明らかとなってきた。細胞への張力負荷によって応答する蛋白質や遺伝子の同定に成功し、力覚機構の解明に一歩近づいた感をもっている。また、単離したストレスファイバの収縮力の計測を始めとして、力覚機構の新たな概念を提示できる可能性も示されてきている。これらの内容の一部は既に国際誌に公表しているが、さらにレベルの高い雑誌への公表を促進していく。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの4年間に柱としてきた下記の4つの主題の下で引き続き研究を推進する。 1.流れ負荷実験に基づいた細胞の応答機構 (1)空間的せん断応力勾配の感知メカニズムにおいて細胞間接着分子を起点としたシグナル伝達経路が想定されるので、阻害因子を用いてシグナル伝達経路および関与する因子の特定を行う。 (2)流れ負荷時の細胞の牽引力変化をより詳細に追跡すると共に、マイクロピラーの空間分布や形状を変化させた場合について検討する。 (3)血流に起因するせん断応力で内皮細胞に誘導、維持されるmiR-21の発現機構と生理学的な機能を解明する。せん断応力から遺伝子発現に至る分子経路を解明し、力刺激に対する応答を可視化する方法を開発する。 2.張力負荷実験に基づいた細胞の応答機構 (1)細胞間接着に依存したストレスファイバの張力変化が、細胞応答に対する焦点接着斑分子および細胞間接着分子の働きに影響している可能性があり、RNA干渉法および活性阻害因子を用いて分子の働きを調べる。 (2)単離骨細胞の力学刺激に対する一酸化窒素産生応答とカルシウム応答のin vitro実験結果に基づき,in vivo状態における骨細胞メカノセンシング機構について、数理モデリングを通じて考察する。 (3)同定した力学応答に関わるRho-GEFの機能解析と共に、基質の硬さ依存的な上皮間葉転換に関与するRho-GEFの網羅的探索を行い、力学応答における細胞骨格再構築の作用機序とシグナル伝達機構の解明を行う。 3.細胞力学応答プロセスにおける細胞内シグナルの分子イメージング (1)力学刺激が細胞骨格を介して細胞核に直接刺激を与えている可能性が指摘されており、介在するタンパク質としてはLINC複合体が考えられる。核は遺伝子の転写を含めて細胞機能に中心的な役割を果たしており、力学伝達の視点からLINC複合体が核機能に及ぼす影響について分子イメージング技術を用いて明らかにする。 (2)力学刺激に対する適応反応を生細胞内にて世界で最高精度にてナノ計測することが可能になった。この独自の評価系を利用し、細胞力覚と細胞内シグナル伝達系との連結分子機序について究明する。 4.ストレスファイバの力覚に果たす役割 提案した力のホメオスタシスの分子メカニズムについて、より広範囲のシグナルとの関連を調べる。そこから、力のホメオスタシスの破綻と病変発生との関連を明示する。
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Research Products
(160 results)