Research Abstract |
(1) てんかん原性域が1点である場合を想定し,頭蓋骨ファントムに8個の頭蓋内電極を埋め込み,電流双極子電極の位置と角度を推定する実験を行い,推定に利用したSORネットワークの有用性が確認できた.(2) 体温と同温度(36℃)の寒天で作った脳モデル内で,熱拡散を想定した凍結数学モデルと,凍結プローブ先端でのアイスボールの形成実験結果から,プローブ直径と凍結過渡応答およびアイスボール直径の関係を明らかにした.(3) 冷凍プローブでラットの脳を凍結させ,その凍結部位が2週間後には周辺組織に吸収されることを確認した(invivo実験).(4) 半導体レーザーおよびホルミウム・ヤグ・レーザーによるラットの脳の焼灼特性を調べ,それぞれの長所・短所を検討した.(5) 冷凍プローブに脳波計測用電極を装着し,ラット海馬スライスの局所凍結により,海馬スライスから発せられるてんかん性異常放電の振幅が減衰し,最終的には消滅することを確認した.(6) 多機能冷凍プローブ専用脳波増幅・電気刺激CMOS集積回路および凍結プローブの温度制御回路の設計を行い,その動作を確認した.(7) 低侵襲な手術で硬膜下に留置可能な形状記憶合金ガイドを用いた微小電極アレイを作成した.アカゲザルを使用した動物実験の結果,頭蓋骨に穿孔した直径7mmの穴から硬膜下に電極アレイを挿入し,体性感覚誘発電位を測定することができた.(8) てんかん患者の光トポグラフィー検査から,発作中のHb濃度の変化を観察した.OxyHbは発作開始から数秒後に上昇し,発作が全搬化したとき間歌的な低下を繰り返した.この変化が起こった部位は脳波から推定されたてんかん原性域にほぼ一致した.(9) 試作したペルチェ冷却デバイスでラットの大脳皮質を局所冷却を行ったところ,15℃では,てんかん波は抑制されても,粗大運動機能(身体の大まかな動き)は抑制されなかった(動物実験).(10) 臨床実験においても,てんかん原性域切除手術中に,ペルチェ冷却デバイスでてんかん原性域を冷却したところ,てんかん波の抑制と同時にグルタミン酸と乳酸の濃度低下が確認された.このことは,脳温の低下とそこで起こっている生理・生化学現象との因果関係を示唆している.
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