2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20011007
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
北田 栄 Kyushu University, 理学研究院, 助教 (20284482)
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Keywords | がん / 毒素 / 細胞 / 微生物 / 動物実験 |
Research Abstract |
微生物由来の細胞毒素(パラスポリン-2)が、特定の培養がん細胞やヒト摘出がんに対してがん細胞特異的に作用し細胞破壊を引き起こす。本年度、パラスポリン-2の受容体に関する基礎研究と担がんマウスへの腫瘍効果や動態を評価した。まず、パラスポリン-2に特異的に結合する細胞因子としてHep27タンパク質を同定したが、これには3種のアイソファームを確認した。一方、マウスを用いた生体実験研究から、パラスポリン-2がマウス由来の培養がん細胞KLN205(肺がん)とColon-26(大腸がん)細胞に対して高い選択性を示すことがわかった。細胞をマウス(BALB/c ♂)皮下に注入し移植、腫瘍モデルマウスを作成した。がん局部へのパラスポリン-2の注射投与では、KLN205、Colon-26ともに約24時間以内で劇的な腫瘍の縮小が観察された。対照投与群との比較では、パラスポリン投与群マウスで腫瘍抑制がみられた。今回、食欲の不振と体重の減少が数日観察されるものの、目だった副作用はなく、組織化学的な所見では、がん細胞の広範な壊死などが観察されたが、正常周辺細胞への影響はほとんど観察されなかった。肝臓や腎臓をはじめとする各種組織器官へのダメージは検出されず、パラスポリンの分布もほとんど観察できなかった。よってパラスポリンはがん細胞に効果的に結合し破壊したと考えられる。一方、パラスポリンの立体構造情報を精査し、4箇所に各々蛍光標識反応を行った。ほぼ全ての分子で蛍光標識がみとめられ、この修飾分子を培養細胞に作用させたところ、3種類の蛍光標識分子が効率的に細胞に結合した。がん可視化や標的運搬体としての分子ツールを得ることができた。
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