2008 Fiscal Year Annual Research Report
HTLV-1の発がん機構における遺伝子編集酵素AIDの関与
Project/Area Number |
20012044
|
Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
森 直樹 University of the Ryukyus, 医学研究科, 教授 (10220013)
|
Keywords | HTLV-1 / ATL / AID / シグナル伝達 / 発現制御 |
Research Abstract |
レトロウイルスであるヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)はCD4^+T細胞に感染後、長い潜伏期間を経て成人T細胞白血病(ATL)』を引き起こす。HTLV-1がコードする調節遺伝子群の中でもtax遺伝子は、その多面的な細胞増殖促進作用、アポトーシス阻害作用、発がん促進作用から中心的な役割を果たすものと考えられている。一方、細胞ゲノムの不安定性の誘導はがん化に必須の基盤であり、Taxタンパク質も細胞のDNA修復機構の阻害と細胞周期のチェックポイント制御の逸脱を誘導することが知られているが、その詳細は不明である。AID(activation-induced cytidine deaminase)は、シチジン脱アミノ活性をもち、ヒトの免疫グロブリン遺伝子を改変する能力を有する遺伝子編集酵素である。これまでAIDは、活性化したBリンパ球でのみ発現し、生理的に機能しているものと考えられてきたが、最近の研究で抗体遺伝子だけでなく、その他の遺伝子にも変異を導入し、発がんとの関連が示唆されている。今年度は、HTLV-1感染T細胞株や末梢血ATL白血病細胞に選択的にAIDが発現していることを明らかにした。さらに、リンパ節や皮膚に浸潤したATL細胞におけるAIDの発現を免疫染色で確認した。CD4^+T細胞へのHTLV-1の感染やTaxの発現誘導は、AIDの発現を誘導し、NF-KBの活性化がAIEの発現誘導には重要であった。現在、AID遺伝子プロモーター上のTax応答領域の同定を行っているが、NF-κB配列にTax誘導性のp50のDNA結合が誘導される結果を得ている。また、TaxトランスジェニックマウスにおけるAIDの発現とp53などのがん抑制遺伝子の変異との関連についても解析を開始している。ATLでの遺伝手変異の蓄積におけるTaxの関与を解明するために、そのプレイヤーとしてAIDを想定し、そのことを立証するのが本研究の目的である。
|
Research Products
(30 results)