2009 Fiscal Year Annual Research Report
HTLV-1の発がん機構における遺伝子編集酵素AIDの関与
Project/Area Number |
20012044
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
森 直樹 University of the Ryukyus, 医学研究科, 教授 (10220013)
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Keywords | HTLV-1 / ATL / AID / NF-κB / Bc1-3 / Tax / シグナル伝達 / 発現制御 |
Research Abstract |
レトロウイルスであるヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)はCD4^+T細胞に感染後、長い潜伏期間を経て成人T細胞白血病(ATL)を引き起こす。HTLV-1がコードする調節遺伝子群の中でもtax遺伝子は、その多面的な細胞増殖促進作用、アポトーシス阻害作用、発がん促進作用から中心的な役割を果たすものと考えられている。一方、細胞ゲノムの不安定性の誘導はがん化に必須の基盤であり、Taxタンパク質も細胞のDNA修復機構の阻害と細胞周期のチェックポイント制御の逸脱を誘導することが知られているが、その詳細は不明である。AID (activation-induced cytidine deaminase)は、シチジン脱アミノ活性をもち、ヒトの免疫グロブリン遺伝子を改変する能力を有する遺伝子編集酵素である。これまでAIDは、活性化したBリンパ球でのみ発現し、生理的に機能しているものと考えられてきたが、最近の研究で抗体遺伝子だけでなく、その他の遺伝子にも変異を導入し、発がんとの関連が示唆されている。種々のヒトT細胞株において、HTLV-1感染Tax発現T細胞株にAID)の発現をmRNAおよびタンパク質レベルで認めた。末梢血PBMCには発現はみられなかったが、PHA刺激PBMCでは発現が誘導され、末梢血ATL白血病細胞においても10例全例でAIDの発現を認めた。一方、B-ALL6例中1例でAIDの発現がみられたが、T-ALL2例では全く発現がみられず、AIDの発現はATLに比較的特徴的であることを明らかにした。さらに、リンパ節や皮膚に浸潤したATL細胞の細胞質におけるAIDの発現を免疫染色で確認した。PBMCやCD4^+T細胞株へのHTLV-1の感染やTaxの発現誘導は、AIDの発現を誘導し、NF-κBやCREBの活性化がAIDの発現誘導には重要であった。AID遺伝子プロモーター上のTax応答領域の探索を行い、NF-κB配列を見出した。Tax誘導性JPX-9細胞やHTLV-1感染Tax発現T細胞株、ATL,細胞の核抽出液を用いたEMSAにて、この配列にp50のDNA結合が誘導される結果を得た。p50発現プラスミドはAIDのプロモーター活性を増強し、p50の遺伝子ノックダウンは感染T細胞株のAID発現を抑制したが、p65発現プラスミドやp65遺伝子ノックダウンはこのような結果を誘導しなかった。p50は転写活性化ドメインを持たないが、Bc1-3と会合することで、転写活性化機能を獲得する。HTLV-1感染T細胞株は選択的にBc1-3を発現しており、TaxはBc1-3発現を誘導した。Bc1-3とp50の結合がHTLV-1感染T細胞株で確認された。
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Research Products
(33 results)