2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20015033
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
際田 弘志 The University of Tokushima, 大学院・ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (50120184)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石田 竜弘 徳島大学, 大学院・ヘルスバイオサイエンス研究部, 准教授 (50325271)
山崎 尚志 徳島大学, 大学院・ヘルスバイオサイエンス研究部, 准教授 (20271083)
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Keywords | DDS / がん治療 / 抗がん剤 / リポソーム / 腫瘍内微小環境 / メトロノミック・ケモセラピー |
Research Abstract |
DDSキャリアによる抗がん剤デリバリーは、血行性に微粒子が腫瘍に送達されるため、血管密度の低い膵臓がんなどでは効果を示さない。LDMは抗がん剤を低用量で繰り返し投与することによりがん新生血管の形成を阻害し、腫瘍の増殖・浸潤・転移を抑制しようとする新たな治療法である。申請者は、LDM時の血管構造の変化に着目し検討したところ、(1)低用量・繰り返し投与時に一過性に血管密度が上昇し血流量が増大する、(2)低用量・繰り返し投与時にがん新生血管が障害を受けるのにともない、血中滞留性リポソームの腫瘍組織への移行量が増大する、(3)実際にLDMと抗がん剤封入リポソーム静脈内投与を組み合わせることで抗腫瘍効果が向上する、ことを確認した。このような腫瘍内微小環境変化を利用すれば、これまでの化学療法では治療が困難な膵臓がんなどの治療が可能になることが期待される。 当該研究期間において、このようなリポソームの腫瘍移行、腫瘍内分布の改善が得られた機構を詳細に検討した。LDM処置後の腫瘍組織切片では血管近傍のがん細胞に強いアポトーシスが誘導されており、腫瘍内の血流評価ではLDM処置群で血流の連続性が向上されていた。血管近傍のがん細胞はその強い増殖能により血管を圧迫して血流を遮断すると同時に、血管外に漏れ出したリポソームが拡散しうる細胞間隙スペースの縮小を招くものと考えられる。LDM投与により血管近傍のがん細胞に恒常的にアポトーシスを生じさせることが、リポソームの腫瘍内分布の改善に寄与したものと考えられる。 これまでのナノキャリアによるがん治療は、キャリア自体の改良により抗がん剤の送達効率を高めることに注力されてきた。ナノキャリアの腫瘍内分布を支配する微小環境を能動的に制御することでキャリアの腫瘍移行性を亢進させるという本戦略は極めて新規性が高く、これまでの化学療法では治療が困難であった腫瘍に対する新たな治療戦略を提示するものと期待している。
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Research Products
(5 results)