2008 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝子変異マウスを用いた体性感覚系神経回路発達の研究
Project/Area Number |
20021032
|
Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
岩里 琢治 National Institute of Genetics, 個体遺伝研究系, 教授 (00311332)
|
Keywords | マウス / 大脳皮質 / バレル / 神経回路 / 活動依存的発達 |
Research Abstract |
神経回路の発達には, 動物が生後に環境から刺激をうけることにより, 活動依存的に精緻化される過程が重要だが, その機構の理解は不十分である。我々は, マウス体性感覚野の「バレル」構造の形成を, 活動依存的発達のモデルとして研究している。カルシウム依存的アデニル酸シクラーゼ(AC1)は全身性変異マウスの解析から、バレル形成に必須な働きをすることは知られていたが、回路のどこでどのように働くのかについては不明であった。我々は大脳皮質特異的CreマウスとAClfloxマウスを交配することにより、大脳皮質特異的AC1ノックアウトマウスを作製した。このマウスでは全身性AC1ノックアウトマウスにみられるような顕著なバレル形成異常は見られなかったが、定量的解析により、第4層神経細胞のバレル辺縁への分布に軽度の異常がみられることを見いだした。また、ゴルジ染色によって、バレル中心に向かっての非対称的な樹状突起の方向性に、軽度ながら有意な差があることを見つけた。さらに、米国Yale大学のMike Crair, との共同研究によって視床一皮質スライスでの電気生理学的解析を行った。全身性AC1ノックアウトにみられるようなプレシナプスの異常は見られなかったが、ポストシナプス側では闇PA受容体が減少するなど全身性ノックアウトと同様の異常が検出された。また、野生型マウスでは発達期の視床-皮質シナプスには長期増強が誘導できるが、大脳皮質特異的ノックアウトマウスでは誘導できなかった。これらのことから、バレル発達において、大脳皮質AC1がNMDA受容体の下流経路の一部で長期増強およびバレル形成に働いていること、および、視床-皮質軸索のプレ側に存在するAClが大きな役割をもつことが示唆された。
|
Research Products
(14 results)