Research Abstract |
複数のK^-中間子が原子核内に束縛された状態(Multi-Antikaonic Nuclei, MKNと略)の性質を, 相対論的平均場理論にカイラル対称性を具現するK中間子ダイナミクスを取り入れた理論的枠組みに基づいて明らかにした。特に, 核内で束縛させるK^-中間子の個数|S|が大きくなるにつれ, K^-場の非線形表現に由来するK-K相互作用の斥力効果とともに, K^-中間子とσ, ω, ρ中間子との結合から生じるK-K相互作用の寄与が重要になること, 両方の斥力効果が核子及びK^-中間子の核内での密度分布, K^-中間子の基底状態エネルギーやMKNの束縛エネルギーなどに大きな効果をもたらすことを示した。またMKNと無限系におけるK中間子凝縮との関係について議論した。 K-K相互作用の斥力効果によって, K^-中間子の1粒子基底状態エネルギーが|S|の増大とともに大きくなり, ∧(1405)の共鳴領域に入ることが示されたが, その場合, K^-中間子が∧(1405)-空孔状態と強く結合すると考えられ, その効果を検討する必要がある。また, 現在の枠組みではMKNの性質にハイペロンによって媒介される効果が考慮に入れられていないが, 例えば, K+N→π+∧, π+Σ等の非弾性過程との結合は, MKNのエネルギー, 崩壊幅に影響を及ぼすと考えられる。一方, ハイペロンがMKN中に混在することによって, K^-中間子, 核子, ハイペロンから構成される更に深い束縛状態が得られる可能性がある。こうしたハイペロンの効果を検討することが課題として挙げられる。 結果は国内外の学会を通じて口頭発表及びポスター発表を行い, また, 学術雑誌に発表した。
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