2008 Fiscal Year Annual Research Report
量子位相欠陥による粒子-ホール対称性の破れに関する理論的研究
Project/Area Number |
20029003
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
海老澤 丕道 Tohoku University, 教養教育院, 総長特命教授 (90005439)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林 正彦 秋田大学, 教育文化学部, 准教授 (60301040)
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Keywords | エキゾチック超伝導 / トポロジカル結晶 / 位相欠陥 / 粒子-ホール対称性 / 電荷密度波 / 渦糸 / 低温物性 / 超伝導 |
Research Abstract |
今年度は超伝導や電荷密度波における準粒子の新奇なダイナミクスと粒子-ホール対称性の破れについて、ミクロなレベルからのの研究を行った。 (1) 電荷密度波の時間に依存するギンツブルグ・ランダウ方程式(TDGL)に関する研究 従来から電荷密度波における凝縮体のダイナミクスの解析には準粒子の自由度を消去したTDGLが用いられてきた。しかし、滑り伝導時の電極付近における位相欠陥の生成消滅などの過程においては準粒子の非平衡分布が重要になるため、このような取り扱いではその点がうまく取り入れられない。本研究では、TDGLに準粒子のダイナミクスを現象論的に取り入れた方程式系を構成し、それに基づいて数値的なシミュレーションを行った。これにより、滑り伝導における位相欠陥の生成とその周辺での準粒子の非平衡分布の時間変化を計算することが可能となった。今後、さらに定量的な解析を進め、従来の理論との比較を行う予定である。また、トポロジカル結晶における位相欠陥のダイナミクスの解析などに応用していく予定である。 (2) グラフェンにおける粒子-ホール対称性と超伝導電流に関する研究 炭素の単層膜であるグラフェンはフェルミ・エネルギー直上において状態密度が消失するという新奇なバンド構造によって近年注目されている。また、2層のグラフェンではゼロギャップ半導体という奇妙なバンド構造が存在することも分かっている。これらの系は、粒子-ホール対称性の観点からも興味深い。本研究では超伝導・グラフェン・超伝導の接合系に関して、トンネル・ハミルトニアンおよびグリーン関数法を用いた解析を行った。その結果、近接効果による臨界電流について、1層系では通常の金属と同じ温度依存性を示すが、2層系では振動的な振る舞いが現れるなど新しい現象を見いだした。これらの結果は、粒子-ホールの量子力学的な干渉効果の現れであると考えられる。
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Research Products
(14 results)