2008 Fiscal Year Annual Research Report
フッ化物イオンとカルベン配位子によるクロスカップリング反応の協奏制御
Project/Area Number |
20037033
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
畠山 琢次 Kyoto University, 化学研究所, 助教 (90432319)
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Keywords | 触媒・化学プロセス / クロスカップリング / 鉄族元素 / カルベン配位子 / フッ化物イオン |
Research Abstract |
有機ハロゲン化物と有機金属試薬とのクロスカップリング反応は,近代化学を支える鍵反応の一つとして知られる. しかしながら, 工業的に利用されているそれらの反応の多くはパラジウムなどの希少遷移金属が触媒として用いられており, 将来的な供給, 環境調和性に課題を抱える. これに対し我々は, 資源性および安全性に優れる鉄族元素とフッ化物イオンとを触媒とする芳香族ハロゲン化物と芳香族グリニャール試薬のクロスカップリング反応の開発に成功した. 本課題研究では, 更なる触媒の高活性化と選択性の向上を念頭に, 計算化学と実験化学的手法により反応機構の解明を目指した. まず, 量論量の触媒前駆体を用いた対照実験により, 本反応が従来のクロスカップリング反応のように触媒前駆体である2価金属塩が0価へと還元されてから触媒活性を示しているわけではなく, 2価のままで触媒として働いている事が示唆された。そこで密度汎関数計算により反応機構解析を行った結果, フッ素の強い金属架橋能により金属交換反応が抑制され, 2価ジフェニル金属が生成しないために還元的脱離による触媒活性種の0価への還元が進行しないこと, アート型の2価中間体が酸化的付加を受け4価の中間体が生成し, 速やかなビアリールの還元的脱離によりを2価中間体が再生するという触媒サイクルを経由していることが明らかとなった.
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