2008 Fiscal Year Annual Research Report
巨大分子クラスターの内部温度制御と構造相転移の解明
Project/Area Number |
20038043
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
中嶋 敦 Keio University, 理工学部, 教授 (30217715)
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Keywords | 分子クラスター / ナノ集合体 / 負イオン光電子分光 / ナフタレン / アントラセン / テトラセン / ホールバーニング / 構造異性体 |
Research Abstract |
本研究では、芳香族有機分子ナノ集合体について、内部温度を制御した負イオンを出発としてポンプ-プローブ時間分解分光実験を推進し、サイズと量子エネルギー準位を区別した実験から、有機結晶や薄膜の電子物性を微視的に理解するための構造相転移現象を解明することを目的として、装置開発を中心に研究を推進した。内部温度制御の方法として、生成した巨大クラスター負イオンを、10-350Kの範囲で温度制御した気体充填八極子トラップを通過させて、内部温度を制御した負イオンとすることを検討した。現有のヘリウム冷凍機と自作の八極子トラップを用いて、トラップ中にヘリウム気体を充填させてイオン強度を観測したところ、イオン量が時間的に拡散するために、飛行時間型質量分析器によるイオン量が100分の1以下に低下することがわかった。これには温度制御をしたヘリウム気体との衝突によって、結合エネルギー0.1eV以下の分子クラスターが解離することも寄与している。この時間的に拡散したイオンの課題の克服のために、同軸上に加速領域が長く高質量分解能化のための3段加速部を設けた飛行時間型質量分析のイオン加速部を新たに設計し、質量分解能m/Δmが約400を実現した。また、初期イオン量を増加させるために、パルスレーザー光による固体表面からの光電子によって負イオン化する手法を開発して、有機金属クラスターを対象に検証を行い、従来に比べて2〜3倍のイオン量増加を達成した。これらの装置開発を基礎に、負イオン光電子分光法によるサイズ選択的な電子状態の観測ができるようになった。 これらの成果を含めて、第2回国際シンポジウム「実在系の分子理論」(8/4〜8/6、岡崎)において研究成果について講演を行い、また、公開シンポジウム(12/16〜12/18、札幌)においてポスター発表を行った。
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Research Products
(5 results)