2009 Fiscal Year Annual Research Report
リアル系へ向けた高スケーラブル電子相関理論の開発と実用
Project/Area Number |
20038046
|
Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
柳井 毅 Institute for Molecular Science, 理論・計算分子科学研究領域, 准教授 (00462200)
|
Keywords | 理論科学 / 量子化学 / 電子相関 / 計算化学 |
Research Abstract |
高スケーラブルな新規電子相関計算法の基礎理論として、電子相関計算のボトルネックとなる積分変換計算を効率化するような「局所ハミルトニアン法」を提唱し、その基礎理論を確立した。本提案手法では、この変換計算に対して、局在化分子軌道を変換基底として利用し、基底空間を区分けし、各区分けで小さな積分変換を行う。そして区分同士の相互作用も低次まで考慮する積分変換を行う。局所ハミルトニアン法の基礎理論を計算機上に実装し、その性能を評価した。(LiH)n鎖をテスト分子として、局所ハミルトニアン法による積分変換計算の計算コスト(総flop数)を見積もった。見積もりでは、ハミルトニアン分割での打ち切りを判定する敷居として、分割領域の二組(IJ)の空間的距離が15bohr以内の組み合わせのみを考慮し、さらにScwarzの公式を用いたprescreeningを施した。長鎖の(LiH)nに対して、総flops数は、鎖長に対して良好な低次スケーリングを示し、ほぼlinear scalingな計算コストであった。従来のo(N^5)の計算コストである計算法と比較して、局所ハミルトニアン法の計算は、n=15~20程度ですでに効率よい計算であることを示した。上の開発で得られた、局在化分子軌道ベースの打ち切り近似ハミルトニアンを利用することで、Pulay、Wernerらの局所電子相関法LMP2法を実装することができる。PulayやWernerらによる実装は、積分変換が難所であったが、本研究では「局所ハミルトニアン」をその強力な処方箋として大規模計算に活用できると期待される。DNA Base-Pairをテスト分子として、Base Pairの相互作用エネルギーをLMP2により求めた。局所ハミルトニアンの分割として2種類の分割様式を試したが、分割様式によらず二種類の計算は誤差が少なく良い一致を示した。分割ではBase Pairの水素結合を切っているが、従来型のMP2計算の結果と比較しても遜色ない精度を算出することを確認した。以上の結果から、本手法の基礎的なアルゴリズムは大まかに形成されたと言える。
|
Research Products
(11 results)