2008 Fiscal Year Annual Research Report
ケモカインによる細胞挙動の制御と初期血管パターニング
Project/Area Number |
20057017
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
高橋 淑子 Nara Institute of Science and Technology, バイオサイエンス研究科, 教授 (10183857)
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Keywords | ケモカイン / 血管 / 平滑筋サブタイプ |
Research Abstract |
血管ネットワークは、体の生理機能の発揮と維持にとってもっとも重要な器官である。血管形成のしくみに関しては、血管内皮細胞の分化機構はよく解析されている一方で、3次元的パターンをとるネットワークが体の中でどのように構築されるのかはほとんどわかっていない。我々は、これらの問題について、血管パターニングとそれを制御する細胞外環境という観点から、特にケモカインシグナルに注目して研究を進めている。これまでに、ケモカインSDF1の受容体であるCXCR4のノックアウトマウスでは、肋間血管の重篤な形成異常がみられるが、背側大動脈は正常であるなどの観察結果を得ている。両血管とも体節中胚葉に由来する組織であり、肋間血管は背側大動脈から分岐して作られる。では、CXCR4はどのようにして肋間血管の形成のみに関わるのだろうか? これらの問いに答えるために、CXCR4mRNAの発現を発生段階を追って観察したところ、その発現は背側大動脈にはほとんど認められなかったが、伸展中の肋間血管には高い発現が認められた。また、CXCR4のリガンドであるSDF1は、肋間血管の周辺組織において特異的な発現をみせた。独自の手法を用いて、背側大動脈内でCXCR4の発現を高めたところ、本来は太い直径で肉厚の血管壁をもつはずの大動脈が、薄い血管壁をもつ不定形の構造へと変化した。加えて、RNAiによってCXCR4を阻害された細胞は、肋間血管の形成には寄与せず、背側大動脈内にとどまるという傾向がみられた。これらの観察結果から、肋間血管に発現するCXCR4は周囲組織からのSDF1によって活性化され、血管内皮細胞の動態(接着分子など)を変化させることで、血管サブタイプの決定に関与している可能性が強まった。本研究は、これまでほとんど未解明であった血管サブタイプの確立機構に、新たな知見を提供するものと思われる。
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Research Products
(16 results)