2009 Fiscal Year Annual Research Report
神経可塑性及び脳の発達におけるIP_3受容体のカルシウムシグナリングの解析
Project/Area Number |
20220007
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
御子柴 克彦 The Institute of Physical and Chemical Research, 発生神経生物研究チーム, チームリーダー (30051840)
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Keywords | IP_3受容体 / 神経可塑性 / GABAA受容体 / 量子ドット / 急性膵炎 / アルツハイマー病 / ハンチントン病 / トランスグルタミナーゼ |
Research Abstract |
1.抑制性神経伝達が関与するGABAA受容体に注目して、シナプス内の受容体数を制御する分子機構の解明を進めた。神経興奮が過剰になるとシナプス内のGABAA受容体数は減少するのに対し、細胞膜上のGABAA受容体の総数は変化しない。また、量子ドットを用いて細胞膜上のGABAA受容体の動きを1分子レベルで追跡したところ、興奮性神経活動の増加に伴って受容体の側方拡散が増加し、シナプス後膜における受容体の安定性が著しく減少することを示した(Neuron 2009)。 2.急性膵炎の発症原因として、アルコールと脂質を材料として作られる脂肪酸エチルエステル(FAEE)という化合物が膵臓細胞内のカルシウム濃度を過剰に上昇させ、トリプシンなど消化酵素を活性化させると考えられている。2型、3型IP_3レセプターノックアウトマウスの膵臓細胞でFAEEによる毒性の減少が認められた。アルコールによる過剰なカルシウム上昇と消化酵素の活性化に、2型、3型IP_3レセプターが重要な役割を果たすことを確証した(PNAS 2009)。 3.アルツハイマー病やハンチントン病などの疾病のメカニズムに関与するトランスグルタミナーゼに注目した。その結果、約200種類の新規化合物のなかで、β-アリルアミノケトン構造にチエニル基とプロモ基を導入した化合物が最も強力に酵素を阻害することが明らかになった。8×10^<-8>Mという極めて低い濃度でトランスグルタミナーゼを阻害した。アルツハイマー病などの神経変性疾患やセリアック病・白内障など、タンパク質の架橋や修飾が関与する病気の治療をめざす創薬に貢献することが期待される(Bioorg Med Chem Lett.2010)。 4.神経突起のNGF依存的な方向転換に、我々が開発した蛍光共鳴エネルギー移動の原理を用いて作成したIP_3指示薬を用いて、IP_3が関与している事を証明した(Science Signaling 2009)。
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