2010 Fiscal Year Annual Research Report
神経可塑性及び脳の発達におけるIP3受容体のカルシウムシグナリングの解析
Project/Area Number |
20220007
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
御子柴 克彦 独立行政法人理化学研究所, 発生神経生物研究チーム, チームリーダー (30051840)
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Keywords | IP_3受容体 / 神経可塑性 / カルシウムイオンセンサー / 小胞体ストレス / 心臓形態形成 / アルツハイマー病 / ハンチントン病 / トランスグルタミナーゼ |
Research Abstract |
1.細胞のストレス応答機構の分子メカニズム 1型IP_3レセプター(IP_3R1)は、脳で高い発現を示し、その機能を遺伝的に喪失したマウスが運動機能障害を引き起こすことが分かっている。また小胞体ストレスは、細胞内カルシウム恒常性を撹(かく)乱し、神経細胞死を誘導することが報告されており、IP_3R1、小胞体ストレスと細胞死との関係を解明した(Neuron, 2010, presented as a cover of Nov. issue)。 2.世界最高の検出感度をもつカルシウムイオンセンサー"カメレオン-Nano"の開発 既存のカメレオンに比べCa^<2+>結合能が最大6倍し、解離定数が140nM(ナノモーラー)から15nMの低Ca^<2+>濃度領域をカバーする合計5種類のセンサーを開発し、カメレオン-Nanoと名付けた。微弱な刺激への細胞応答が検出できることを示すために、アデノウイルスベクターを用いて、大脳皮質の神経細胞に導入した。電気刺激により単一活動電位を発生させ、その応答をCa^<2+>イメージングで検出した結果、単一活動電位発生時のCa^<2+>変動を従来のカメレオンに比べ2倍のシグナル変化を得た(Nature Method, 2010)。 3.心臓形態形成及び機能にIP_3レセプターが関わる事の証明 胎生期より心臓に発現している1型と2型IP_3レセプターを同時に欠損したダブルノックアウトマウスを作製したところ、心内膜床の発生異常をきたし、胎生期に死亡することを確認した。また、ダブルノックアウトマウスの心内膜床組織に、カルシニューリンを恒常的に強制発現させると、異常の一部は回復することが認められた(PLosOne,2010)。2型IP_3レセプター強制発現は心肥大を起こし、そのIP_3レセプター機能を抑えると正常化する事を明らかにし(Circulation Res. 2010)、2型IP_3レセプターが心機能に関わることを証明した。
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