2011 Fiscal Year Annual Research Report
二重ラセン構造制御を基盤とする新規物性・機能の開拓
Project/Area Number |
20225006
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
八島 栄次 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50191101)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
飯田 拡基 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (30464150)
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Keywords | 二重ラセン / 光学活性 / 超分子 / 高分子 / キラリティー / ヘリケート / 転写 |
Research Abstract |
本研究では、二重鎖からなるラセン分子・高分子を創製するための一般性の高い概念の確立とその実現、構造と物性との相関の解明、情報機能(複製、情報の保存)の発現、光学分割材料への応用等を目指し、以下に示す成果を得た。 1. 中央部にビピリジル部位を有するオリゴフェノール誘導体をホウ素試薬と反応させることにより、スピロボレート部位で架橋され、ナトリウムイオンがラセン内部に強固に包接された、安定な二重ラセンヘリケートが生成することを見出した。また、中央部にスチルベン部位を有する新規な二重ラセンヘリケートを合成し、スチルベンの光異性化を利用することで、光照射により二重ラセン構造が制御できることを見出した。 2. 様々なリンカー部位を有するアミジン二量体とカルボン酸二量体を合成し、アミジニウム-カルボキシレート塩橋形成を介した相補的二重ラセン形成挙動について詳細に検討を行った。その結果、リンカー部位やアミジン部位の置換基が二重ラセンの安定性に強く影響を与えることが分かった。また、ジアセチレン及びフェニレンリンカーを有する二重ラセンと白金錯体をリンカーに有する二重ラセンでは鎖交換のメカニズムが異なることを明らかにした。 3. 種々のリンカー部位を有するキラルなアミジンの二量体をテンプレートとして用い、片末端にアルデヒド基を有するカルボン酸モノマーとラセミのシクロヘキサンジアミンを混合したところ、イミン結合形成反応を通じてシクロヘキサンジアミンが不斉選択的にカルボン酸モノマーと反応し、一方向巻きに片寄った二重ラセンを形成することを見出した。すなわち、相補的な二重ラセン分子の一方の鎖をテンプレートに用いることで、テンプレートの絶対配置に関する情報を、相補鎖へ転写することに成功した。 4. ポリイソシアニドやポリアセチレンなどの種々のラセン高分子が、不斉触媒や光学分割材料として応用できることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度は、新規なホモ及び相補的二重ラセン分子・高分子の合成と構造解析、それらを用いたテンプレート重合を可能にするシステムの開発を行い、二重ラセン構造に由来する新たな機能開発を行う予定であった。研究の結果、スピロボレート架橋を有する様々なヘリケートや、アミジニウム-カルボキシレート塩橋で架橋された数々の新規二重ラセン分子の合成に成功するとともに、二重ラセン形成メカニズムの解明が大きく進展した。また、合成した数々の二重ラセン分子を駆使することにより従来にないテンプレート合成システムの構築に成功するとともに、それらを用いたキラル情報の転写も成し遂げた。さらに、光応答性部位を導入した二重ラセンが光に応答して構造変化を起こすことを明らかにし、今後の大きな展開を予想させる結果を得ることができた。また、ラセン構造を精密に制御したラセン高分子が、不斉触媒や光学分割材料として利用できることを見出すなど、応用面での研究も大きく進展した。以上の結果は、当初予想をはるかに上回る興味深い結果であり、二重ラセンの構造制御を基盤とする新しい物質群・材料の創製と、二重ラセンに由来する新規物性・機能の探求を目指す本研究目標を、予想を上回るペースで達成しつつあると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
研究目標のひとつである「二重ラセンの構造制御を基盤とする新しい物質群・材料の創製」については、これまでの研究によって飛躍的な進展が見られており、今後も系統的な研究を押し進め、二重鎖ラセン分子・高分子を創製するための一般性の高い概念の確立を目指す。もうひとつの課題である「二重ラセンに由来する新規物性・機能の探求」については、現在興味深い結果がいくつか出始めており、今後重点的に研究を推進する。具体的には、蛍光性を有する伸縮自在の二重ラセンヘリケートからなる分子スプリングの合成を行い、蛍光による伸縮挙動やゲストとの相互作用の検知が可能なシステムの開発を実施する。また、光応答性部位を導入した二重ラセン分子の創製を進め、光応答による二重ラセン構造の自在制御を目指す。さらに、ポルフィリンなどの機能性分子を導入した様々な二重ラセン分子の開発を通じ、二重ラセン構造に特異な新規物性や機能の創出を目指す。また、これまで構築してきた二重ラセンの形成を利用したテンプレート合成システムをさらに発展させ、複製や情報の保存といったより高度な情報機能の発現を目指すとともに、機能発現のメカニズムを詳細に解析する。
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Research Products
(86 results)