2011 Fiscal Year Annual Research Report
遊走細胞と神経細胞の極性形成を制御する分子ネットワーク
Project/Area Number |
20227006
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
貝淵 弘三 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (00169377)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
天野 睦紀 名古屋大学, 医学系研究科, 准教授 (90304170)
渡辺 崇 名古屋大学, 医学系研究科, 特任講師 (10402562)
森 大輔 名古屋大学, 医学系研究科, COE特任講師 (00381997)
西岡 朋生 名古屋大学, 医学系研究科, 助教 (70435105)
坪井 大輔 名古屋大学, 医学系研究科, 助教 (80584672)
|
Keywords | シグナル伝達 / 脳・神経 / 細胞骨格 / 極性 / プロテオーム / 遊走 / 微小管 / 小胞輸送 |
Research Abstract |
生体を構成する種々の細胞は特徴的な極性を獲得し、固有の生理機能を担っている。遊走する細胞、神経細胞や上皮細胞がその顕著な例である。本研究では遊走細胞と神経細胞をモデルシステムとし、細胞極性の獲得・小胞遊走の制御機構の解明を目指す。 本年度は神経細胞で一本の軸索が選択される分子機構に着目し、解析を行った。我々は、微小ピペットを用いて複数本の等価な神経突起のうち一本のみをニュートロフィンで刺激するとその突起が伸長し、将来軸索になることを見出した。また、ニュートロフィン刺激がIP_3受容体を介した一過的な細胞内Ca^<2+>濃度の上昇を引き起こすこと、それに伴ってCaMKKが活性化されることを明らかにした。一方、IP_3-Ca^<2+>-CaMKKシグナル伝達経路が生体内の軸索形成にも必須であることを見出しており、この経路が軸索運命決定に重要であることが示唆された。さらに、極性を獲得する際の、実験データに基づいたシミュレーションモデルの構築に成功し、伸長する神経突起の先端に因子が輸送・集積することが極性獲得に重要であることが示唆された。 また、Rho-キナーゼ阻害剤と脱リン酸化酵素阻害剤で処理した細胞抽出液からリン酸化蛋白質をアフィニティー精製し、LC/MS/MSによってRho-キナーゼ基質やそのリン酸化部位をプロテオーム的手法で解析した。新規Rho-キナーゼ基質として121個の候補蛋白質を同定し、Par-3の新規リン酸化部位が実際に細胞内でRho-キナーゼによりリン酸化されることを見出した。この方法は基質の網羅的同定を可能とし、キナーゼが極性を制御する分子機構の包括的な理解が進むと期待される。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、遊走細胞と神経細胞の極性形成を制御する分子基盤を明らかにしつつある。実験データに基づいたシミュレーションモデルを構築し、極性制御因子が軸索先端に輸送・濃縮することが神経細胞の極性形成に重要であることを数理学的に説明できた。さらに、極性を制御するキナーゼ基質を網羅的に同定する方法の開発に成功しており、極性を制御する分子ネットワークの理解が進みつつある。
|
Strategy for Future Research Activity |
遊走細胞の極性形成機構については、RhoA新規結合蛋白質SHIP2がRhoAの下流で脂質代謝を制御し、極性に関与するという予備的な知見を得ており、これを完遂させる。一方で、aPKCがTiam1をリン酸化することで、Tiam1の分子内相互作用を解離させ、その活性を制御する可能性が高いためその解析を行う。神経細胞の極性形成機構については、Par-3がErkによってリン酸化されることでキネシンから解離することを見出している。今後、ErkによるPar-3のリン酸化の意義を検討することで、極性制御因子の輸送と軸索運命決定の分子基盤を解明する。さらに、本年度までに開発した2つのキナーゼ基質同定法を用い、極性を制御するキナーゼ基質の探索を網羅的に解析する。
|