2008 Fiscal Year Annual Research Report
海洋有機物の統合的理解-有機物プールの消長と地球表層炭素循環へのインパクト-
Project/Area Number |
20241005
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
田上 英一郎 Nagoya University, 大学院・環境学研究科, 教授 (50133129)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原 成光 宮崎国際大学, 比較文化学部, 教授 (50261243)
西田 民人 名古屋大学, 大学院・環境学研究科, 助教 (60313988)
|
Keywords | 溶存有機物 / 有機地球化学 / 生物地球化学 / 海洋化学 / 物質循環 |
Research Abstract |
本研究では、海洋有機物プール消長がもたらす地球表層炭素循環へのインパクトを明らかにするために海洋有機物動態の総合的理解を目指す。以下に本研究の目的を達成するための2つのアプローチを設け、研究を推進する。初年度は、アプローチIに重点を置いて研究を遂行した。 アプローチI:溶存有機物全体を網羅的に把握し、海盆スケールの分布から、各有機成分の動態を解明する観測的・現象論的アプローチ アプローチII:生態系の変動に伴う非生物有機物生成の変化と海水中に存在する有機分子の残存現象を実験的・メカニズム面から解明するアプローチ 平成20年7月に東京大学海洋研究所所属淡青丸による相模湾・黒潮域を対象海域とした研究航海および平成20年9月に三重大学生物資源学部所属勢水丸による伊勢湾〜三河湾〜黒潮流軸〜四国海盆航海に参加し、これらの航海において、試料を採取した。採取した試料に対し、有機炭素量、同定可能成分(脂質、糖、アミノ酸)の濃度を有機炭素計、高速液体クロマトグラフィーを用いて測定し、試料の基礎パラメータを得た。さらに得られた試料について、限外濾過法および電気透析法を用いて、海水中の無機塩類の除去方法について条件検討し、濃縮有機物試料を得たのち、蛍光標識糖鎖電気泳動法を用いて、海水中の溶存有機物に2〜21単糖の糖鎖が含まれることを発見した。これらの糖鎖は、従来海水に酸処理を行うことで検出可能となる単糖類の存在することから、海水には多糖類が存在することが指摘されてはいたが、具体的に糖鎖を構成する単糖の個数までは知られていなかった。海洋の溶存有機物中の多糖類そのものを世界で初めて検出したことは、大きな成果である。
|
Research Products
(4 results)