2010 Fiscal Year Annual Research Report
黒海地域の国際関係-4次元分析による学際的総合研究
Project/Area Number |
20252005
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
六鹿 茂夫 静岡県立大学, 国際関係学研究科, 教授 (10248817)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
廣瀬 陽子 慶應義塾大学, 総合政策学部, 准教授 (30348841)
吉川 元 上智大学, 外国語学部, 教授 (50153143)
黛 秋津 広島修道大学, 経済科学部, 准教授 (00451980)
佐藤 真千子 静岡県立大学, 国際関係学研究科, 助教 (40315859)
大西 富士夫 静岡県立大学, 国際関係学部, 研究員 (20542278)
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Keywords | 黒海地域国際関係 / 比較地域協力 / バレンツ欧州北極圏協力 / BSEC / 色革命 / 狭間の地政学 / アイデンティティ政治 / グルジア |
Research Abstract |
平成21年度は、地域協力の実態、成果と問題点、成否の原因を柱に、地域協力の比較研究に努めた。具体的には、黒海協力を他の地域協力と比較する目的で、バレンツ協力(BEAC)の実態について調査した。その結果、BEACが各作業部会ネットワークの複合体であること、その機能的統治構造が加盟国による意思決定機能と市民社会による実施機能の双方から成っていること、これら両機能を取り持つコーディネーターの役割が協力の成否を左右していることなどが明らかになった。また、BEACの存続要因として、ロシアが国内体制の中央集権化に対する地域住民の不満の捌け口としてBEACを肯定的に評価していること、ノルウェーがEU政治への自国の影響力の増大とロシアからの非軍事的脅威の軽減のためにBEACを利用している点が明らかになり、黒海協力とバレンツ協力の非対称性が明瞭となった。他方、歴史的には、黒海地域の地域間協力の歴史的経緯を明らかにする目的で、ロシア・オスマン・西欧諸国間の黒海秩序をめぐる諸関係と、ルーマニアとオスマン帝国間、カフカースとソ連間、バルカンと西欧諸国間などの政治外交関係の実証分析を行った。経済分野においては、黒海経済協力機構(BSEC)の歴史、組織構造、機能を、BSECの公式文書の閲読、関係者へのインタヴュー等を通して明らかにした。その際、国際収支、特に労働者送金と経常赤字の関係、GDPと財政赤字の関係等当該諸国のマクロ経済構造が抱える問題にBSECがどのように対処できるかという観点から研究を行い、BSECが当該地域の経済発展に少なからぬ寄与をしていることが理解できた。その他、22年度は、中東の政変に2003-2005年のいわゆる「色革命」が関係していることに鑑み、旧ソ連地域の「色革命」後の体制変動について分析した。その結果、ウクライナやグルジアで「色革命」が後退する一方、モルドヴァでは中道右派の「欧州統合連合」(AIE)内閣が誕生して民主化が進んだが、これらの背景に、EUとロシアの「狭間の地政学」的要因、EUとロシアの外交目標の対照性、アイデンティティ政治に決定づけられる政党システムなど存在することが明らかとなった。
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Research Products
(9 results)