2011 Fiscal Year Annual Research Report
黒海地域の国際関係-4次元分析による学際的総合研究
Project/Area Number |
20252005
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
六鹿 茂夫 静岡県立大学, 国際関係学研究科, 教授 (10248817)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
廣瀬 陽子 慶応義塾大学, 総合政策学部, 准教授 (30348841)
黛 秋津 広島修道大学, 経済学部, 准教授 (00451980)
佐藤 真千子 静岡県立大学, 国際関係学部, 専任講師 (40315859)
小窪 千早 静岡県立大学, 国際関係学部, 専任講師 (00362559)
吉川 元 上智大学, 外国語学部, 教授 (50153143)
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Keywords | 黒海国際関係 / BSEC / 未承認国家 / トランスニストリア問題 / ミサイル防衛 / 南オセチア / サウス・ストリーム・パイプライン / クリミア問題 |
Research Abstract |
歴史分野では、黒海地域をめぐる近代国際関係を、西欧諸国、ロシア、オスマン帝国という諸大国間のせめぎ合いの観点から実証的に明らかにする作業を行い、近代黒海国際関係の歴史的変遷を包括的に取りまとめた。具体的には、19世紀のルーマニアや20世紀のアルメニアなどの事例を通じて、周辺大国による黒海地域進出の具体的過程や目的に関する成果を積み上げた。経済分野では、BSECを通じた同地域の経済協力の可能性に焦点をあて、同機構が冷戦後の新しい経済協力のモデルとなりうる一方で、各国共通のマクロ経済問題をその枠組み自体のなかでは解決できないことを明らかにした。具体的には、各国の経常赤字の軽減に寄与してきた出稼ぎ労働者の本国送金が、サブプライム危機以降急減していることが、この地域の経済全般に暗い影を投げかけているとの結論を得た。国際政治分野では、黒海地域、その他の地域、世界場裡という3次元の国際政治の連動性の実証に努め、以下なる結論を得た。MD交渉、CFE交渉、シリアとイランをめぐる問題が、トルコを「新しい欧州」と米国へと急接近させ、黒海の内海化に向け協力関係を築いてきたロシアとトルコが軍事面で対立を深めた。とはいえ、ロシアとトルコはサウス=ストリーム・パイプライン建設で合意に至ったため、EUとロシアの狭間で混迷するウクライナは、安全保障上さらなる重荷を抱えることになった。他方、グルジア=ロシア戦争は欧米諸国にクリミア問題を想起させ、EUはクリミア開発支援に乗り出した。また、同戦争後の欧米諸国の対露リセット政策は独仏露関係の絆を深化させ、それが一助となって、トランスニストリア問題の解決枠組みである「5+2」交渉が再開された。最後に、ロシアが「未承認国家」に対して依然強力な影響力を保持していることは周知の事実であるが、トランスニストリアおよび南オセチアで自国が推す「大統領候補」 が敗れるなどロシアの影響力の限界も露呈した。
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Research Products
(26 results)