2010 Fiscal Year Annual Research Report
コンテンツ産業における生産性とその規定要因に関する実証的研究
Project/Area Number |
20300090
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
濱野 保樹 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 教授 (90138157)
|
Keywords | コンテンツ / 生産性 / コスト病 / 映画 / アニメーション |
Research Abstract |
コスト病の枠組みを複製型コンテンツに応用した世界初の定量的研究である本研究によって、コスト病に回避しているように見えるコンテンツ産業も、複製技術で市場拡大させたり、ウインドウと呼ばれる流通に関する技術革新で、新たな市場を作り、コスト病の発症を先延ばしさせていることが明らかになった。そのため市場が飽和すると、労働集約的であるため、またコスト病に陥り、日米比較によってアメリカは海外市場拡大で、また日本は制作費抑制で、コスト病発生を先伸ばししてきたことを明らかにした。しかし、アニメーターに対する大規模調査の分析によって、現状では生産性の向上ができないとすれば、現状では制作費を抑制できない可能性が高いという結果を得た。 労働集約的で生産性が低いというコスト病の根源を改善できないまま、デフレや少子化、無料ビジネスモデルの普及によって、コンテンツの対価を得にくくなっている現在、海外市場からの収益を得ることが困難な日本のコンテンツ産業は、ヨーロッパや韓国のように公的支援なしには維持できないであろうことが判明した。生産性向上の技術革新が図れないとしたら、わが国ではコンテンツ制作を生業維持の産業ではなく、芸術のような公共財と見なして支援する方法を模索する研究も必要性であろう。
|
Research Products
(5 results)