2010 Fiscal Year Annual Research Report
αキメリン変異マウスを用いた中枢神経回路の形成と機能の研究
Project/Area Number |
20300118
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Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
岩里 琢治 国立遺伝学研究所, 個体遺伝研究系, 教授 (00311332)
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Keywords | 神経科学 / マウス / 遺伝学 / 神経回路 / 発達 |
Research Abstract |
前後肢とも左右をそろえて歩くという特徴をもつ自然発生変異マウス(ミッフィー変異マウス)の発見を端緒とする一連の解析により、αキメリンというRac (RhoファミリーGTPaseの1種)を不活化する蛋白質(Rac-GAP)が、運動系神経回路の軸索誘導において鍵となる働きをすることを見つけた。本研究課題では、それを発展させ、αキメリンの、神経回路の発達と機能の幅広い局面における役割を解明することを目的とした。神経回路の異常は最終的には動物の行動の異常となって検出できると考えられる。それを知る目的で、αキメリン変異マウスの網羅的行動解析(オープンフィールド、高架式十字迷路、恐怖条件付け、ロータロッド、ホームケージ活動)を行った。その結果、解析を行ったほとんどの項目で、異常が検出された。これらの行動パラダイムの基盤となる神経回路はそれぞれ異なると考えられるので、これらの結果は、αキメリンが様々な神経回路の発達(機能)で重要な働きをすることを強く示唆するものである。αキメリンが、脳のどこで働くかを知るために、Cre/loxP組換えシステムを用いた。まずは、大脳皮質、海馬など背側終脳の興奮性神経細胞でのみCre組換え酵素を発現するマウスとαキメリンのfloxマウスを交配し、目的のマウスを手に入れた。また、αキメリンにはスプライシングアイソフォームが存在し、生化学的特徴に違いがあるだけでなく、その発現時期にも大きな違いがある。αキメリン変異マウスではすべてのスブライシングアイソフォームが欠損しているので、それぞれの行動パラダイムに関して、どちらのアイソフォームがどのような働きを担うのかを知るために、アイソフォーム特異的ノックアウトマウスを作製し、解析を行ってきた。
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