2010 Fiscal Year Annual Research Report
トランスポゾンシステムを用いた医学・生物学研究ツールとしてのラットリソースの構築
Project/Area Number |
20300142
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
北田 一博 北海道大学, 大学院・理学研究院, 准教授 (70263093)
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Keywords | トランスポゾン / ラット / 疾患モデル / リソース |
Research Abstract |
sleeping beautyと呼ばれる哺乳類でも機能するトランスポゾンシステムをラットにおいて確立した成果を基に、網羅的にラットで挿入突然変異を惹起してリソースを構築するのが、本研究の最終目標である。挿入突然変異および欠失突然変異の特徴は、基本的な突然変異型であるnull mutationを惹起できる点にある。マウスと比較して表現型の解析がしやすいラットにおいてnull mutationのリソースを構築することは、マウスでできなかったことをラットにより可能となり、広い範囲のバイオメディカルサイエンスの領域を活性化させることにつながる。 本年度は引き続き挿入突然変体を作出したことに加え、まずは国内大学との共同研究の形で分与を行い、挿入突然変体の詳細な表現型解析を実施した。すなわち、Netrin-4トラッピング系統を大阪大学の山本亘彦教授に送付して詳細に解析していただいた。北海道大学での通常の病理学的、病理組織学的検索や行動学的、繁殖学的解析では異常は観察されなかったにもかかわらず、大阪大学においてセロトニントランスポーター(5-HTT)抗体を用いた免疫染色を行ったところ、ノックアウトラットの体性感覚野におけるバレル構造の染色像が正常対照と比して減弱することが見出された。さらに、脳スライスの長期培養がマウスではきわめて困難であるがラットでは容易に行える利点を生かして、皮質と視床をin virto共培養したところ、ノーマルコントロールに比してノックアウトラットにおいては視床軸索の枝分かれ形成が減少していることが確認された。プレリミナリーな表現型解析だけでは不十分な情報提供になる可能性があること、ラットの利点をアピールしてツールの利用を促進することは重要であること、を示す実例となった。
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