2008 Fiscal Year Annual Research Report
分子間相互作用に基づく難聴発症機構解明のためのモデルマウスの樹立と応用
Project/Area Number |
20300147
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
吉川 欣亮 Tokyo University of Agriculture, 生物産業学部, 准教授 (20280787)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
設楽 浩志 (財)東京都医学研究機構, 東京都臨床医学総合研究所, 研究員 (90321885)
野口 佳裕 東京医科歯科大学, 医学部付属病院, 講師 (50282752)
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Keywords | 分子間相互作用 / 難聴発症機構 / ヒト難聴モデルマウス / Myosin VI / DBA / 2J / マウス亜種間交配 / Sans / Whirlin |
Research Abstract |
聴覚系で機能する遺伝子・蛋白質の分子生物学的解析には難聴モデルマウスが極めて大きな貢献を果たしてきた。そこで本研究は遺伝学の手法に基づき、複数の新規難聴モデルマウスを樹立し、これらと既存の難聴モデルを用いて難聴遺伝子間の分子間相互作用を実証し、難聴発症に関連する分子間ネットワークを解明することを目的として研究を実施し、以下の結果を得た。 (1)新規難聴マウスの責任遺伝子の単離・同定:C57BL/6J系統に自然発症した難聴マウスの原因遺伝子のポジショナルクローニングを行った。その結果、このマウスはMyosin VI(MYO6)タンパク質の発現が欠損していることが明らかとなり、この突然変異は難聴モデルマウスの1種であるSnell's waltzerのアレルであると考えられた。しかし、このマウスのMyo6遺伝子の蛋白質コード領域には変異は認められず、このことからこのマウス突然変異は発現制御領域に存在することも予想された。一方、DB/12Jの難聴原因遺伝子のポジショナルクローニングを試みた結果、難聴発症には複数の遺伝子座の関与が示唆され、主要遺伝子と推定される遺伝子座が第5番染色体の約20cMの範囲にマップされた。 (2)マウス亜種間交雑のゲノムの不適合性による難聴発症モデルの構築:これまでの解析結果からMSM系統とBALB/cJ系統の交配によるゲノム不適合性がマウスの聴力に影響を与えることが明らかとなり、その原因遺伝子座が第5番染色体の広範囲の領域に存在することが示された。そこで本研究においては両系統間でそれぞれの5番染色体を置換したコンソックマウスを作成しており、現在第4世代まで作成が進行している。 (3)2種の難聴マウスjsおよびwi間の2重変異体の作成と表現型比較:Sansの突然変異により内耳有毛細胞の感覚毛が崩壊するJackson shaker(js)およびWhirlinの突然変異により感覚毛の短毛化を示すwhirler(wi)間の2重変異体を作成し、表現系を解析した結果、2重変異体ではより重篤な感覚毛異常を示し、特に感覚毛の極性異常が明確に検出された。また、jsおよびwiの変異アレルのコンパウンドヘテロの聴力測定を行った結果、両者のヘテロ接合体と比較して聴力が減退しており、特に高周波音域で有意な聴力差が認められた。
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Research Products
(7 results)