Research Abstract |
現代社会は,科学技術の進歩や人々の意識の変化により,非常に多様なリスクが顕在化している。現代社会に生きる我々は,これらのリスクに対処するために,個人的判断やあるいは政策決定を行っていかざるをえない。しかしこれらの問題には,定量的な評価の可否,ゼロリスクの可否など複雑な状況があり,その判断は高度に行政的,政治的要素を含む複雑なものであり,もはや専門家や施政者のみで判断を行うべきではなく,基本的に国民の総意を必要とし,一般市民の意識を反映した形で行うべきであろう。本研究の目的は,わが国の一般市民の現段階でのリスクや科学技術に関する知識レベル,認知レベルにとその構造ついて把握し,リスクリテラシー向上を目標とする科学及びリスク教育の実現のための,効果的な科学教育方法の開発に向けての基礎資料を得ることである。 当該年度は,リスクリテラシーに関する現状やこれまでの経緯に関する文献や,実際に一般市民向けに書かれている様々な環境・健康リスクに関わる書籍等を収集し,現在,どのようなリスクや科学技術に関する情報が一般市民伝えられようとしているか調査した。また,現時点で何らかのリスクに関与する活動を行っている専門家(化学物質,地球温暖化,放射線,医療放射線,違法薬物等)を対象としたインタビューを行い,これにより,啓発側の専門家等がそのリスクをどのように認知しているか,また当該リスクについてどのようなリテラシーを持つことを必要と考えているかについて詳細について聞き取り,そのあり方について検討した。一方,一般市民に対し20種のリスク項目についての関心や危険の認識に関する予備的調査を行った。その結果,特に放射線に関わるリスクに対して,一般市民の認識が専門家の認める現状とやや乖離している状況が認められた。
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