Research Abstract |
現代社会は,科学技術の進歩や人々の意識の変化により,非常に多様なリスクが顕在化している。本研究の目的は,わが国の一般市民の現段階でのリスクや科学技術に関する知識レベル,認知レベルにとその構造ついて把握し,リスクリテラシー向上を目標とする科学及びリスク教育の実現のための,効果的な科学教育方法の開発に向けての基礎資料を得ることである。 当該年度は,全国の成人2000人を対象とした面接調査を行い,科学技術に対する意識のあり方の他,17の科学技術等の認知について検討を行った。その結果,17項目の科学技術等のうち,車と携帯電話は非常に使用頻度,必要性が高く,恩恵を被っていると考えられており,また安全性についても「ある」との回答が他の項目に比して高かった。科学技術等に対する知識については,特に原子・火力・風力発電所,車,航空機などの工学的なものやナノテクノロジーなどの新しい技術に対しては特に男性が知識を持っていると回答する率が高く,知識を持つと回答した率が女性が高かった項目は食品添加物のみであった。一方,それぞれの項目に対するリスク認知については,ほとんど男女差は認められず,個人に対しては大地震の他はたばこ,農薬,放射線,食品添加物が,社会に対しては同様に大地震,たばこ,農薬,原子力発電所が危険が大きいと考えられていた。17項目に対するイメージは悪い順に大地震,たばこ,放射線で,次いで農薬,食品添加物,遺伝子組み換え食品と,食品に関連する項目が比較的上位に挙げられた。イメージと,リスク認知の程度・安全性に対する認識との間にやや強い関連が認められた。また,車や携帯電話,レントゲンなど,比較的身近と思われるものを除いては女性が男性と比較して悪いイメージをもつ割合が高い傾向があった。今後,多変量解析により解析を行い,認知と他の属性と関係性などを明らかにしていく。
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