Research Abstract |
本研究では,電子デバイス等を用いた人間の記憶力強化の新しい手法を提案し,その実証を行うことを目的としている.本手法は,人間の記憶特性を利用してその容量を拡大するために,空間情報に基づいて記銘を強化する.その原型は古来の記憶術に見ることができるが,本開発の特徴は,着用可能(wearable)計算機または超小型計算機,カメラ,タグ等を用いることにより,場所(空間)やモノの特性を利用し,かつ視覚的な映像を動的に構成することで,従来の記憶術の利点を活かしつつ,日常活動の自然なきっかけでシステムを利用する中で意識せずに習熟し,誰でも容易に使用することが可能となる点である. 本年の研究では,記銘の掛けくぎを合成する手法の1つとして開発を進めてきた,場所を主体とした記憶掛けくぎについて,被験者が撮影するのでなく,既に撮影された写真系列を画面に提示し,これに対して記憶掛けくぎを構成する手法を開発した.本手法では,PC画面上で記憶掛けくぎを簡単に構築することが可能であり,利用者の利便性が著しく高められる.本手法による記銘効果を実験により評価した結果,被験者が自分で実空間を歩行しながら記憶掛けくぎを生成した場合とほぼ同様に高い再生率が得られることが明らかとなった.これにより,高い記銘効果の発現に要する条件として,現実の場所の歩行を要することなく,既知の場所の写真への記憶掛けくぎ要素の合成行為があれば有効であることが示唆された.更に,新しい記憶掛けくぎの構築手法として,場所を用いたもの以外の方法として,これまで開発を行なってきた図形化数字に加えて,五十音の平仮名を用いた記憶掛けくぎ要素を提案した,五十音の平仮名を図形化するために,五十の各音で始まる具象物を用いた場合と,歴史上の人物を用いた場合の2種類を構成した.これらの手法は,場所型と同様に高い再生率を達成することが実験により明らかとなった.
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