2010 Fiscal Year Annual Research Report
環境化学物質の発達神経毒性:トキシコゲノミックなアプローチによる評価法の確立
Project/Area Number |
20310037
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
田代 朋子 青山学院大学, 理工学部, 教授 (50114541)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
根岸 隆之 青山学院大学, 理工学部, 助教 (80453489)
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Keywords | 環境化学物質 / 神経科学 / 発生・分化 / マイクロアレイ / 発達神経毒性 |
Research Abstract |
トキシコゲノミックなアプローチによる効率的な発達神経毒性評価法の確立を目指し、独自に作成したカスタムDNAマイクロアレイを用いて、トリブチルスズ(TBT)経世代曝露動物の発達期脳における遺伝子発現変化をまとめるとともに、胎生期のサリドマイド単回曝露による「自閉症モデル・ラット」についても生後発達期の海馬と大脳皮質について同様に解析した。このモデル動物ではセロトニン系の異常が報告されており、TBTとは毒性機構が大きく異なる。解析の結果、サリドマイド曝露動物では、海馬に比べて大脳皮質での遺伝子発現変化が大きいこと、正常ラット大脳皮質で生後20日頃にみられる成長型から成熟型への遺伝子発現プロファイルの切り替わりがサリドマイド曝露動物では明確でないこと、など、部位特異的な発達期の異常を検出することができた。さらにDNAマイクロアレイの結果をリアルタイムPCR法で確認し、一部についてはタンパク・レベルでもウェスタンブロットおよび免疫組織化学により発現変化を調べた。このように、シナプス構造遺伝子、神経活動依存性遺伝子、ミエリン構成遺伝子など、その発現が発達期の脳で大きく変化する遺伝子群を抽出することで発達神経毒性を感度よく捉えられることが実証できた。 さらに、培養神経細胞を用いた実験系から、化学物質に対するアストロサイトの反応が神経毒性を大きく左右する可能性がクローズアップされてきた。今後は血管系と神経系のインターフェースとしてのアストロサイトにも注目し、その応答を検出する遺伝子群を選定することで、さらに感度の良い神経毒性評価システムへと発展させることができると考える。
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