2008 Fiscal Year Annual Research Report
自己集積型有機ラジカルの化学修飾による高次元スピンネットワークの構築
Project/Area Number |
20310060
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
吉岡 直樹 Keio University, 理工学部, 准教授 (30222392)
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Keywords | 有機ラジカル / 分子磁性 / 自己組織化 / 水素結合 / 磁気特性 / メタ磁性 / 構造物性相関 / スピンフロップ |
Research Abstract |
本研究では、水素結合により一次元積層体を形成する自己集積型有機ラジカルを研究対象として、化学修飾により、積層カラム間に有効な磁気カップリングを発現させ高次元スピンネットワークを有する有機固体を合理的に設計するための方法論を確立する。平成20年度においては、ベンズイミダゾールの5(6)位にハロゲン(塩素、臭素、ヨウ素)およびシアノ基を導入した分子ならびに対応するインドール誘導体の合成研究ならびに構造-磁性相関を中心に議論した。ハロゲンを導入したベンズイミダゾール体のうち、塩素、臭素を導入した誘導体では積層カラム内では強磁性的な相互作用が維持されたが、積層カラム間で反強磁性的な相互作用が強まった。臭素を導入した誘導体では積層構造が大きく変化し積層カラム内での強磁性的な相互作用が確認できなかった。一方、対応する6-インドール体では、塩素、臭素、ヨウ素いずれを導入した誘導体でも積層カラム内で強磁性的なカップリングが観測された。積層カラム間では、軸方向に依存して強磁性的および反強磁性的なカップリングがともに存在した。その結果、1.8〜2.2Kの温度でメタ磁性体に転移した。この転移温度は、これまでの純有機メタ磁性体に比べ一桁高く積層カラム構造をとる本誘導体の特異性が示された。さらに、転移温度以下では、スピンの向きが反転するスピンフロップを純有機ラジカル結晶として初めて観測することに成功し、これらの磁気特性がクラス2の反強磁性体であることを明らかにした。シアノ基を導入した誘導体は、極性が高いため2量体を形成した。現在、シアノ基をエチニル基に変換した誘導体で検討を進めている。以上、積層カラム間で磁気カップリングを伝達するのに有効な置換基の探索を行い、その過程で新しいタイプの純有機メタ磁性体を見出すことに成功した。
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Research Products
(6 results)