2010 Fiscal Year Annual Research Report
多機能性抗がん物質ラメラリンの活性発現分子機構の解明と制御
Project/Area Number |
20310135
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
岩尾 正倫 長崎大学, 大学院・工学研究科, 教授 (00100892)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石橋 郁人 長崎大学, 大学院・水産・環境科学総合研究科, 教授 (10192486)
福田 勉 長崎大学, 大学院・工学研究科, 助教 (80295097)
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Keywords | ラメラリン / キナーゼ阻害剤 / 構造活性相関 / 分子機構 / 軸不斉 |
Research Abstract |
海洋天然物ラメラリンNは、細胞周期を制御するサイクリン依存性キナーゼ(CDK)等のプロテインキナーゼ類を強く阻害する。ラメラリンNのキナーゼ阻害機構を明らかにし、高選択的キナーゼ阻害剤を創製することを目的に下記の研究を行った。 (1)ラメラリンの持つ軸不斉がキナーゼ阻害にどのように影響をおよぼすかを明らかにするために、軸周りの回転を押さえた16-メチルラメラリンN誘導体の光学活性カラムによる分割を行った。このようにして合成した光学活性は16-メチルラメラリンN、両エナンチオマー間で、CDK阻害活性に大きな違いがある事が明らかになった。 (2)ラメラリンの軸不斉に関与するC1-C11間の単結合周りの回転の活性化エネルギーは、従来は分子力場計算による予測値のみが報告されていたが、温度可変nmrにより実験的に求めることに成功した。その結果、5,6-ジヒドロ体で、73.6kJ/mol、5,6-デヒドロ体で86.6kJ/molであることが明らかになった。これらの値は、単純なラメラリン誘導体の光学分割が室温では困難であるという実験事実を裏付けるものであった。 (3)1位置換1-デアリールラメラリンNアナローグについて、CDKを含む数種のプロテインキナーゼにたいする阻害活性を評価した。その結果ある種の誘導体にDYRKIAキナーゼに対する選択性があることが判明した。このキナーゼは、ダウン症候群やアルツハイマー病等の発症に関与するキナーゼである。このことは、ラメラリン誘導体がこれらの疾患の発症メカニズム解明のツールや治療薬のリード化合物となり得ることを示しており、興味深い。
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