2008 Fiscal Year Annual Research Report
空間における形の認知を介した「主体」の存立の基底に見る感覚の根源性についての研究
Project/Area Number |
20320003
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
栗原 隆 Niigata University, 人文社会・教育科学系, 教授 (30170088)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山内 志朗 慶應義塾大学, 文学部, 教授 (30210321)
座小田 豊 東北大学, 大学院・文学研究科, 教授 (20125579)
尾崎 彰宏 東北大学, 大学院・文学研究科, 教授 (80160844)
野家 伸也 東北工業大学, 工学部, 教授 (80156174)
佐藤 透 東北大学, 大学院・国際文化研究科, 准教授 (60222014)
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Keywords | 形 / 空間 / モリヌー問題 / 主体 / 主観 / 感覚 / 体系 / 自覚 |
Research Abstract |
平成20年度の共同研究は、先ず、私たちが、限りなく多くの形に囲まれた空間のなかでこそ、自らの主体性を自覚し得ることを多角的に明らかにすることを狙って、編者の栗原、加藤尚武、座小田豊、尾崎彰宏、城戸淳らによって執筆された『形と空間おなかの私』(東北大学出版会)をもって出発することになった。 8月30日(土)には、公開研究会「主体は感覚され得るか?客体は触知され得るか?造形を体感する中で考える」を開催、栗原が、近代の主体概念の成立する背景に、マイモンを介して、実体概念が主語に見定められるとともに、モリヌー問題が、認識における触覚と視覚の優位性をめぐる論議のみならず、実に対象的な認識の不確実性を説くことを通して認識の主観性を基礎付けることになった事情があることを解明した。尾崎彰宏は「レンブラント、フェルメール時代の女性像」を発表、描かれた女性の姿態がまさしく、規範意識や習俗を暗示するものであることを明らかにした。また、8月31日(日)には、造形体験の中で主体の感覚が研ぎ澄まされることを研修した。 その後、この分野の問題では画期的な成果であった加藤尚武の『形の哲学』が、『「かたち」の哲学」(岩波書店)となって増補復刊された。また尾崎彰宏の、『レンブラント、フェルメールの時代の女性たち-女性像から読み解くオランダ風俗画の魅力』は、絵画に描かれた姿態・形が、身体の形象だけでなく、社会規範を映すものであるところに風俗画の意義があることを明らかにした。 さらに本年は、種々の学会のシンポジウムで、研究成果を提題、加藤尚武と栗原隆は、日本ヘーゲル学会主催の国際シンポジウムで、「体系」のかたち、あるいは基礎について発表、座小田豊は、限りのない神を認識する際の問題性について、佐藤透は、造形における美意識が共感に通じることについて、明らかにした。 平成20年度の研究では、空間における形の認知の機序、ならびに自覚の成り立ちにあって空間認知が不可欠な意義を持っていることについて、多面的に解明することを通して、次年度の課題、知る営みを超えたところでの感覚の根源性について明らかにする方途を獲得し得た。モリヌー問題は、視覚に対する触覚の優位性を明らかにしただけでなく、主体性の自覚にあって、「触れること」の根本的な重要性を際立たせたところにこそ、現代に通じる意義であることを確認することが出来たのは、従来の認識を大きく踏み出す理論的な解明であった。
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Research Products
(16 results)