2010 Fiscal Year Annual Research Report
ロマン主義時代の旅行記とその歴史的背景~国家意識・国民意識の変容を中心にして
Project/Area Number |
20320044
|
Research Institution | The Open University of Japan |
Principal Investigator |
草光 俊雄 放送大学, 教養学部, 教授 (90225136)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
笠原 順路 明星大学, 人文学部, 教授 (00194712)
鈴木 雅之 宮城学院女子大学, 学芸学部, 教授 (50091195)
大石 和欣 名古屋大学, 大学院・文学研究科, 准教授 (50348380)
鈴木 美津子 東北大学, 大学院・国際文化研究科, 教授 (60073318)
アルヴィ なほ子 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 准教授 (20313174)
|
Keywords | ロマン主義 / 帝国 / 旅行記 / グランド・ツアー / 国民意識 / 国家意識 / オリエント / 植民地主義 |
Research Abstract |
昨年度の問題点を解決しながら、18世紀から19世紀にかけてイギリスが進出した各地域の旅行記の中に潜む国家意識・国民意識を分析する調査を継続した。草光俊雄が全体を統括しながら、調査を行うと同時に、イタリアから専門家を招聘し研究セミナーを開催した。 石幡は、メアリ・ウルストンクラフトの『北欧からの手紙』の翻訳を終えて、訳者解説を執筆した。鈴木雅之はフェリシア・ヘマンズ作品『返還』と『近代ギリシャ』に焦点をあて、フランスからローマへ、あるいはギリシャからイギリスへの美術品の移動、帝国などに対するヘマンズの姿勢、さらには当時の英国美術界の状況を明らかにすることで、帝国と国民意識の問題に迫った。鈴木美津子はシャーロット・ブロンテの『ヴィレット』とエリザベス・ギャスケルの『北と南』を取り上げ、これらヴィクトリア朝の小説に描かれた旅、そして地方意識・国民意識の形成について検証した。さらに、笠原は、剣闘士を扱った詩または詩の一部の系譜を18世紀の詩にたどることで、ローマ帝国の制度化された蛮行に対する義憤が当時の言説に頻繁に表現されていることを特記し、そこに当時の国民意識の変容の過程を読み取ろうとした。 一方で、アルヴィはS. T.コウルリッジの『クブラ・カーン』(1797)とイギリスのマッカートニー卿使節団派遣との関係を精査しながら、東インド会社のカシミール支配と中国政策との関係と本国政府との軋轢を明らかにし、1790年代のグローバル化する世界の中でのイギリスと帝国清朝との関係を究明した。大石は、ヘレン・マライア・ウィリアムズの作品に描かれたペルーの歴史物語詩の中に、当時における英国とスペインとの対立を見出し、国民意識の変容を論じると同時に、17世紀後半から前半のグランド・ツアーの中に新しい審美眼と国民意識の萌芽を見出すことに成功した。各研究者はそれぞれの成果を論文あるいは学会発表を通して公表した。
|
Research Products
(11 results)