2008 Fiscal Year Annual Research Report
グローバル化時代における文化的アイデンティティと新たな世界文学カノンの形成.
Project/Area Number |
20320052
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
沼野 充義 The University of Tokyo, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (40180690)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野谷 文昭 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (60198637)
柴田 元幸 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (90170901)
毛利 公美 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 助教 (30419212)
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Keywords | 世界文学 / 翻訳 / 広域英語圏文学 / ラテンアメリカ文学 / ロシア東欧文学 / 亡命文学 / 現代日本文学 / 文学的カノン |
Research Abstract |
本研究は現代世界の文学の複雑なプロセスをできるだけ広い視野から調査し、新しい文学研究のあり方を探るものである。代表者が主な専門領域とするロシア東欧の他、分担者と緊密な連携をとりながら、広域英語圏、広域スペイン語圏、亡命・越境文学など様々な分野の研究を並行して進めた。今年度重点課題としたのは、第1に欧米の周縁や日本も視野に入れて世界文学の現状を総合的に把握しながら、欧米中心主義的な世界文学像の再検討を試みること、第2に現代世界文学における翻訳の役割の重要性を解明することである。 第1の課題については、(1)南北アメリカ--ベトナム系作家りン・ディン、ポーランド系作家ダイベック、世界文学とラテンァメリカ、ガルシア=マルケス、現代キューバの作家と文化的環境、(2)中・東欧--セルビァ作家パヴイチと中欧ポストモダニズム、ハンガリー作家エステルハージと中欧の詩学、ポーランドの周縁文化、(3)日本と世界--中国人日本語作家楊逸、日独バイリンガル作家多和田葉子、現代日本文学とロシア、日本文学の境界と新たな「世界文学」の概念、といった様々な作家・主題について個別の研究を深めるとともに研究集会・シンポジウムなどを開催し、現代世界文学の多様性と越境性を確認し、文学的カノン(規範)が再編成されつつある現状を概観した。 第2の課題については、若手研究者の積極的な参加を得て国際ワークショップ「翻訳と世界文学」や、越境・移民文学をめぐるシンポジウム「未来への郷愁」を主催したほか、日本ロシア文学会全国大会においてワークショップ「ロシア文学にとって翻訳とは何か?」を組織した。その結果、現代の世界文学において翻訳が決して副次的・周縁的な現象ではなく、作家自身の創作のプロセスの本質に関わるものであることを確認し、また翻訳による原作の変容と受容を通じて現代の世界文学が形づくられていく過程を検討した。
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Research Products
(17 results)