2010 Fiscal Year Annual Research Report
グローバル化時代における文化的アイデンティティと新たな世界文学カノンの形成
Project/Area Number |
20320052
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
沼野 充義 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (40180690)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野谷 文昭 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (60198637)
柴田 元幸 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (90170901)
加藤 有子 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 助教 (90583170)
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Keywords | 世界文学 / 翻訳 / 広域英語圏文学 / ラテンアメリカ文学 / ロシア東欧文学 / 亡命文学 / 現代日本文学 / 文学的カノン |
Research Abstract |
平成22年度は、「グローバル化時代の世界文学の多様性と多言語性」を主要課題とし、広域英語圏、広域スペイン語圏、ロシア東欧圏の三つの分野を主要な領域としつつ、現代日本も常に視野に入れて研究活動を行なった。 まず、広域英語圏については、非英語圏出身作家の英語文体の研究に重点をおき、ジョゼフ・コンラッドやヴラジーミル・ナボコフ、カズオ・イシグロなどの例を取り上げ、彼らの文体の比較検討を中心に、テーマ、世界観などを考察した。代表者沼野によるナボコフ『賜物』、分担者柴田によるコンラッド『ロード・ジム』の新訳と詳細な解説もこの分野での成果である。 広域スペイン語圏では、ヒスパニックあるいはラティーノ文学と呼ばれる北米の文学を視野に入れながら、キューバ、コロンビアなどのカリブ海圏の文学に重点を置き、この地域の言語と文学の多様性を研究した。分担者野谷によるエステバン、バニチェリ『絆と権力-ガルシア=マルケスとカストロ』の翻訳および解説もこの分野の成果である。 ロシア東欧圏では、この地域における多民族性・多言語性に重点を置き、民族・言語・文化的アイデンティティの関係を研究した。対象となる主な作家は、アブハジア系作家イスカンデル、チュヴァシ系詩人アイギ、ポーランドのユダヤ系作家シュルツなど。また代表者沼野はストックホルム、韓国、モスクワなどの学会で、ロシア東欧文学とアジア・翻訳などのテーマで発表し、この分野における国際的交流を推進した。分担者加藤はドロホビチの国際学会でシュルツについて報告を行なった。 上記の様々な分野における研究を統合・発展させる契機として、ゲスト講師を招いての研究集会・セミナーなども積極的に開催した。そのうち特に重要な三つの国際シンポジウム等については、それぞれ報告集をまとめて2011年3月に刊行した(「本郷の春-ナボコフ亡命ロシア作家たちをめぐる連続講義の記録」、「ロシア文学と東アジア」(英語)、「社会制度としてのロシア文学」(ロシア語))。
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Research Products
(14 results)