2010 Fiscal Year Annual Research Report
複雑述語の処理メカニズム-理論言語学と言語脳科学の協働による実証的研究
Project/Area Number |
20320069
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊藤 たかね 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (10168354)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
萩原 裕子 首都大学東京, 大学院・人文科学研究科, 教授 (20172835)
杉岡 洋子 慶應義塾大学, 経済学部, 教授 (00187650)
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Keywords | 言語脳科学 / 事象関連電位 / 言語処理 / 形態論 / 統語論 |
Research Abstract |
本研究は,「語」の認知処理に関わる心内・脳内メカニズムを,複雑述語の処理に焦点をあて,事象関連電位(ERP)計測の技術を用いて解明することを第一の目的とする。同時に,日本語の処理に関わるERPの基礎データを蓄積することを第二の目的としている。 2010年度は,以下に示すように,2つの実験の実施および1つの実験案の策定を行った。実験1,2は第二の目的に,実験1,3は第一の目的に関連する。 〈実験1〉埋め込み構造の処理に関わるERF反応の計測を行うために,日本語の「自分」が長距離束縛を許すという性質を利用した実験を行った。単文構造を想定していた読み手が複文構造であることを認識した時点で,前頭陰性波(AN)成分が観察されることが示された。この結果は,2011年3月の国際学会(TCP 2011)にて口頭発表を行った。 〈実験2〉日本語の処理に関わるERPの基礎データを蓄積する目的で,動詞の屈折違反の実験を行った。英独語を中心とする先行研究では,屈折や格照合の違反にLANと呼ばれる統語違反に特有のERP成分観察がされているが,日本語では格違反にN400が観察され,典型的な統語違反応としてのLANは観察されていない。動詞の活用形の違反についてのERP反応を計測することによって,日本語の統語違反に英独語と同じ成分が得られるか否かを検証する予定である。2011年2月-3月に実験を行う予定であったが,震災のため一部延期され,2011年度に継続して行う予定である。結果の解析は2011年度中に行う予定。 〈実験3〉埋め込み構造を含み,規則的な接辞付加を用いる可能形(「流せる」)の処理を,単文構造でレキシコンに記憶されていると考えられる目動詞形(「流れる」)の処理と比較検討するERP実験案を策定し,刺激文の検討を行った。2012年度中に実験を実施し,2013年度中に結果の解析を行う予定である。
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Research Products
(7 results)