2011 Fiscal Year Annual Research Report
中国朝鮮族と回族の民族教育と民族アイデンティティ形成に関する総合的研究
Project/Area Number |
20320113
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Research Institution | Keiwa College |
Principal Investigator |
松本 ますみ 敬和学園大学, 人文学部, 教授 (30308564)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 敦子 早稲田大学, 教育総合科学学術院, 教授 (90195769)
小林 元裕 新潟国際情報大学, 情報文化学部, 教授 (80339936)
権 寧俊 新潟県立大学, 国際地域学部, 准教授 (20413172)
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Keywords | 民族教育 / オーラルヒストリー / 民族アイデンティティ / 中国国民統合 / 人口移動 / 文化伝承 / ディアスポラ / グローバル化 |
Research Abstract |
当研究の目的は、省境・国境を越え移動する中国朝鮮族と回族の民族教育が、グローバル化する現代、どのような民族的アイデンティティ変容をもたらしているのかについて検討することであった。両民族に共通のディアスポラ性、強い民族アイデンティティ、越境性という点に着目し、権、松本はそれぞれ都市部の朝鮮族、回族にアンケート調査を行った。その結果、両民族は、民族教育経験者とエスニック意識に相関関係にあることが判明した。調査対象者239名(内、朝鮮族109名、回族127名)は総じて民族教育を受けた若年層であり、高い流動性を示していた。しかし、交友関係や婚姻関係が同じ民族同士に偏り、また伝統的行事にも積極的に関わろうとする態度をとっていた。その理由として、回族の場合は、宗教言語アラビア語が中東諸国からのムスリム商人との通商言語でもあり、世俗化よりもアラビア語を学んで宗教化したほうが経済的安定と仲間からの信頼関係を構築できるということが挙げられる。同様に、朝鮮族も、朝鮮語と中国語というバイリンガルであることを生かして、積極的に韓国企業や韓国と関わろうという意識が強くなっていることが挙げられる。小林敦子は、両民族だけでなく、他の複数の少数民族の学校現場を訪れた経験から、これら両民族はたまたまグローバル化に掉さして経済的に「成功」しているだけで、他の少数民族の民族教育の現場には民族文化を残そう、という熱気に欠けていることを指摘している。小林元裕は、歴史的観点から関内の朝鮮人の日本敗戦前後の連続性を史料に基づきに明らかにした。研究協力者花井みわは、満洲国時代の日本式教育を受けた朝鮮族老人から精力的に聞き取りを行い、教育経験が人民共和国成立以降の個人の社会的地位向上にある一定の役割を果たしたことを明らかにした。また、同、清水由里子は、回族の関連民族であるウイグル族言説の近代における「創成」について明らかにした。
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Research Products
(19 results)