2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20320126
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Research Institution | National Research Institute Cultural Properties, Nara |
Principal Investigator |
次山 淳 National Research Institute Cultural Properties, Nara, 都城発掘調査部, 考古第三研究室長 (80260058)
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Keywords | 考古学 / 日本古代史 / 貨幣史 / 出土銭貨 / 和同開珎 / 富本銭 / 無文銀銭 |
Research Abstract |
本研究は、富本銭と無文銀銭、和同開珎の分析を通して、わが国の貨幣制度の確立過程を考究し、新たな視点から初期貨幣史の再構築を目的としたものである。3カ年計画の2年目に当たる平成21年度は、実施計画に沿って以下の研究を行った。 1.経済史・法制史的分野の考察では、季禄の物品が具備する歴史的意味、位階による俸給差、調制にみる物品の価値などを整理し、奈良時代の物価と比較検討した。貨幣発行後も米、布帛などが基幹の物品貨幣として貨幣的価値を持ち続け、中世に至ることを確認した。また検討の過程で、雇役制、力役制度と銭貨の関係が新たな課題として浮上した。 2.権衡制度と銭貨の重量に関しては、中国では開元通寳が重量単位になるほど、権衡制度と貨幣制度が密接に関係していたのに対して、わが国では富本銭の重量を同時代の開元通寳に合致させて発行したが、初期の古和同銭発行時に極端に重量化が進み、奈良時代の新和同になると軽量化が顕著に進行することを確認した。これは地金貨幣を駆逐するための銀銭対策の一環と見られ、銭貨が地金価値から離れて次第に名目貨幣化する傾向を把握することができた。 3.研究集会「和同銀銭の鋳造技術をめぐる諸問題」を開催した。和同銀銭の私鋳銭を認定するための鋳縮み実験と、「珎」を「寳」の省画とする「和銅開寳」説の根拠となった銀の湯流れ具合を確認するために銀銭の鋳造実験を行い、実験結果について研究者間で議論を交わした。 4.平成20年度に開催した研究集会『出土銭貨研究の課題と展望』の記録集を刊行した。
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Research Products
(2 results)