2010 Fiscal Year Annual Research Report
文化財保護制度における世界遺産条約の戦略的受容と運用に関する日韓比較
Project/Area Number |
20320133
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岩本 通弥 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (60192506)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川森 博司 神戸女子大学, 文学部, 教授 (20224868)
高木 博志 京都大学, 人文科学研究所, 准教授 (30202146)
淺野 敏久 広島大学, 大学院・総合科学研究科, 准教授 (00284125)
才津 祐美子 長崎大学, 環境科学部, 准教授 (40412613)
青木 隆浩 国立歴史民俗博物館, 研究部, 准教授 (70353373)
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Keywords | 世界遺産条約 / 無形遺産条約 / 文化財保護法 / 語り部 / 口承 / 文化的景観 / 民俗技術 / グローバル・スタンダード |
Research Abstract |
本研究は、UNESCOの世界遺産条約と無形遺産条約が1990年代初めより、「文化」に関するグローバルスタンダードとなりつつある現状において、日本と韓国の文化財保護制度が、それらをどのように摂り込み、現実との齟齬を調整しながら運用していくのか、そのローカライズ/ナショナライズのプロセスを、比較の視点を踏まえて明確化にすることを目的とした。最終年度の平成22年度は、まずは10月に、柳田國男『遠野物語』の刊行百周年で、これも用いて観光資源化を試みている岩手県遠野市の現場を訪れ、研究協力者である韓国人研究者も同行・視察させ、比較検討を行った。韓国では日本でいう「語り部」、いわゆる民話を物語るパフォーマーによって地域資源化を行っている例は、現在のところ全く見出せず、「口承」のありように関して両国間の差異が明らかになった。また12月には最後の日韓合同研究会として、ソウル市内の文化的景観修復の現場を巡検しながら、世界遺産条約におけるCultural Landscape概念の導入が一大転機となった、両国の文化財保護法上の「景観」概念の、受容と運用に関して、比較検討を試みた。両国ともに同法上には存在しなかった文化的景観を、どのように制度の中に定着させていったか、これが論点となるが、何を対象化するかでは両者は近接するものの、法律条文で「文化的景観」という新たなカテゴリー(種別)を設けて対応した日本に対し、韓国では既存の「記念物」とカテゴリーの中で、運用によって対処している顕著な相違が浮き彫りにされた。同様の運用レベルでの対応の相違は、「民俗技術」というカテゴリーにおいても認められるが、平成23年度に繰り越された研究会において、研究分担者・協力者の総意で、本研究成果を論集として刊行することが決定され、年度後半は各自、その執筆に精力を費やした。
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Research Products
(52 results)