2010 Fiscal Year Annual Research Report
制度改革期における「裁判の公開」原則の再検討―制度と人権の関係性解明に向けて
Project/Area Number |
20330005
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
笹田 栄司 北海道大学, 大学院・法学研究科, 教授 (20205876)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村上 裕章 九州大学, 大学院・法学研究院, 教授 (20210015)
鈴木 秀美 大阪大学, 大学院・高等司法研究科, 教授 (50247475)
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Keywords | 裁判の公開 / 裁判を受ける権利 / 報道の自由 / インカメラ審理 / 情報公開訴法 / 情報公開訴訟 |
Research Abstract |
一 本年度は、裁判の公開を制限するインカメラ審理についてシンポシウム(学会発表参照)を8月に開催した(報告者:村上九大教授、コメンテーター:町村北大教授)。村上は、平成21年最高裁決定及び情報公開法改正案を素材にインカメラの立法化について検討を行った。また、本年3月には、研究総括のための研究会を開催し、情報公開法改正の現況(村上)、ドイツにおける法廷メディア公開と被告人の人格権(鈴木)、そして、司法権の構造的理解と新たな「裁判」解釈(笹田)の報告がなされ、裁判の公開をめぐる様々な憲法問題が議論された。 二 インカメラ審理立法化について、村上は、インカメラ審理合憲説に立ったうえで、インカメラ審理の適用領域を、逆FOIA訴訟、独立行政法人情報公開法、情報公開条例、個人情報保護制度にも適用すべきであるが、必要性と補充性を実体的要件とすべきで、さらに、当事者の手続保障に配慮すべきことを主張する。また、インカメラ審理合憲論については、裁判の公正・公平を「憲法82条1項本文にある『公の秩序』の文言に読み込み、その決定についての手続要件を非公開決定に適用できる」とする公序説が唱えられている(渋谷秀樹)。一方、情報公開訴訟におけるインカメラ審理認容の実体的要件たる(裁判所は)「当該行政文書・法人文書の提出を受けなければ公正な判断をすることができないと認めるとき」(内閣府案)は、「『公の秩序又は善良の風俗』という実体要件にも匹敵する憲法上の重みをもつもの」(佐藤幸治)と評価でき、例示説からも憲法上根拠づけることは可能だろう。その際、情報公開請求権が「知る権利」を具体化するもので、その重要性については憲法上疑義を差し挟む余地はないから、その訴訟での実現を裁判を受ける権利が非公開審理という形で保障するという枠組みが考えられる(笹田)。
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Research Products
(5 results)