2008 Fiscal Year Annual Research Report
多文化共生社会の福祉政策・教育政策・人権政策に関する国際的比較研究
Project/Area Number |
20330026
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
飯田 文雄 Kobe University, 法学研究科, 教授 (70184356)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
月村 太郎 同志社大学, 政策学部, 教授 (70163780)
辻 康夫 北海道大学, 大学院・公共政策学連携研究部, 教授 (20197685)
網谷 龍介 明治学院大学, 国際学部, 准教授 (40251433)
早川 誠 立正大学, 法学部, 教授 (80329010)
渋谷 謙次郎 神戸大学, 法学研究科, 教授 (50346277)
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Keywords | 多文化主義 / 思想史 / 政治史 / 共生社会 / 福祉政策 / 少子高齢化 / キムリッカ / コミュニタリアニズム |
Research Abstract |
本研究は、多文化共生社会の政策過程において2000年代以降生じた変化を解明することを目指すものであり、本年度は、特に福祉政策の分野における文化的少数派の位置付けを手がかりに、北米・西欧・東欧各国での政策変容に関する研究を行った。(1)そのため本研究ではまず、主として2000年代以降台頭した、福祉政策の変容と多文化共生社会の関係性に関する、キムリッカ、バンティングその他諸論者による理論的研究の整理と問題点の批評判的検討を行った。その結果、1)従来、福祉政策と多文化共生政策の関係性に際しては、例えばコミュニタリアニズムやポストモダニズムの諸論者に代表される、多文化共生政策の結果国民的連帯が弱体化し、それが福祉政策への指示を弱体化するとする見解が通説的位置を占めてきたこと、2)これに対し、近年多文化共生政策への指示者達からは、福祉政策の盛衰は国民的連帯感の盛衰と必ずしも一致しないとする研究や、逆に多文化共生政策はむしろ社会的分裂を克服し一定の連帯感を養成するためにこそ有効であるとする研究など、多数の興味深い研究が行われつつあるという重要な知見が得られた。(2)更に本研究では、主として2000年代、北米・西欧・東欧の各国において、具体的にいかなる文化的少数派が各国の福祉政策過程に編入され、その結果これら少数派文化に関するいかなる権利・義務関係の変容が帰結したかに関する比較研究を行った。その結果、本研究では、1)先進国における少数派文化受け入れ政策は、少子高齢化の影響を受けて従来よりもその長期的受け入れを積極的に進める方向に変化しており、その結果各国でも文化的少数派に対し一定の福祉受給権を認める事例が増加しつつあること(2)更に先進国では福祉労働力としての少数派の役割も高まっており、こうした少数派の存在感の増大がその福祉受給権の位置づけにも影響を及ぼし得ること、等の知見を得た。
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Research Products
(24 results)