Research Abstract |
本研究の目的は, スポーツ・看護・芸能領域の伝承場面における「わざ」習得に効果的に作用する修辞的な言語(「わざ」言語)の分析を通して, わざが習得されるメカニズムを解明し, 同時に, 有効な指導言語モデルを構築することにある。そのため, わざ言語の問題を, (1)わざ言語の関係性, (2)わざ言語の身体性, (3)わざ言語の日常性, (4)わざ言語の行為性, 及び(5)わざ言語の表現性, の5つの要素に基盤を置いた要素ごとにインタビュー調査および行動観察を実施し, わざ言語体験の詳細についてデータ収集を行った。具体的には, 優れた指導実績をおさめている伝統芸能領域の指導者として, 日本舞踊および和太鼓指導者を取り上げ, スポーツ領域ではノーボード指導者を取り上げ, 彼ら彼女らが用いるわざ言語の現場に立ち入った参与観察を行い, ビデオ撮影, インタビュー, 及びフィールドノートによってデータ収集・分析を行つた。同時に各指導者のもつ指導理念や指導観についてもあわせて調査を行い, ひゆ的な指導言語としてのわざ言語が生起する指導の文脈に関する分析も行った。初年度であるため, まだ十分な分析結果は得られていないが, 教え学ぶ場におけるわざ言語を対象とした本研究を通し, (1)ひゆ的な言語がわざの収得に作用するメカニズム解明, 及び(2)スポーツ, 看護, 及び芸能領域の伝承現場で有効に作用するわざ言語モデルの構築が可能となると考えられる。これにより, 実際の指導現場におけるわざ言語の体系化が可能となり, 新たな指導方法の提案がなされることが期待される。
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