2011 Fiscal Year Annual Research Report
明治期初等国語読本とリテラシー形成メディアとしての子どもの読み物に関する研究
Project/Area Number |
20330180
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
府川 源一郎 横浜国立大学, 教育人間科学部, 教授 (00199176)
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Keywords | 修身教育 / 児童文学 / 教育史 / 教科書 |
Research Abstract |
本年度は、修身教育・副読本類と子ども読み物の研究を進めた。具体的には、修身教育の大きな流れを踏まえつつ、その周辺にあった「修身読み物」をリストアップし、子どもの読み物文化の一環としてそれを位置づけた。国立国会図書館の近代デジタルライブラリーで入手できる文献については、ほぼ関連文献の一覧表を作成し、それを分析した。また、「修身口授書」として教室で広範に使われた『修身説約』や、おそらくその校外版だと思われる種々の「修身読み物」類、あるいは草双紙屋で売られていたと考えられる「明治赤本」などと学校教育との関連を考察することもできた。 そこでは、「修身口授」から始まった修身の授業が、いわば「ストーリーテーリング」と同じような現場性と問題を抱えていたという観点に立って、いくつかの「修身読み物」をとりあげて考察を進めた。また、それが教室でひとまとまりの話として語られたという事実に目を留めることによって、文字として書かれた「読み物」と音声表現との関係を、さまざまな位相から考えた。 このように、本年度の研究では、明治初期から始まって、国定教科書が出現するまで、すなわち明治37年前後までの、修身教育と子ども読み物との関係を大筋で押さえることができた。 4年間にわたった本研究を通しては、以下のような成果があがった。すなわち、明治期の子どもたちが何を読んできたのか、また、大人たちや文教当局は何を読ませようとしてきたのか、その具体的な様相を明らかにしたことである。また、そこから、急速な近代化の中で、在来の文化との激しい摩擦の中で生み出された様々な活字メディアを通して、子どもたちがどのようなリテラシーを身につけてきたのかを跡づけることもできた。
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