2010 Fiscal Year Annual Research Report
ダイヤモンド超伝導体とその関連物質の電子状態:バンド半導体-金属転移と超伝導
Project/Area Number |
20340091
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
横谷 尚睦 岡山大学, 大学院・自然科学研究科, 教授. (90311646)
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Keywords | 高濃度ホウ素ドープダイヤモンド超伝導体 / 高濃度リンドープダイヤモンド / ピセン超伝導体 / 光電子分光 |
Research Abstract |
本研究課題では、ダイヤモンド超伝導体と関連物質に対して様々な光電子分光手法を組み合わせドーピングによる電子状態変化等を研究することにより、まだ十分に理解されていないバンド半導体の半導体-金属転移及び超伝導機構の解明を目指す。本年度は、ダイヤモンド超伝導体関連物質について光電子分光によりその電子状態を明らかにした。高濃度リンドープダイヤモンドに関しては、内殻準位スペクトル測定から昨年度までに見いだしていた複数の化学サイトについて、その起源をバンド計算による各サイトの炭素1s結合エネルギ値と比較する事で検討した。本研究結果は、未だ実現していない高濃度リンドープダイヤモンドの金属化への指針を示す結果である。高濃度ホウ素ドープダイヤモンドにおける内殻準位スペクトル研究と合わせて考察する事により、高濃度ドープダイヤモンドにおいては、置換サイト以外にドープされる原子数を低く抑える事が金属性を得るのに重要である事を示唆された。ドープにより超伝導を発現する芳香族多環縮合炭化水素ピセンの半導体-金属転移に伴う電子状態を調べる為に、純粋およびカリウムドープピセン固体の光電子分光を行い、電子状態の観測に世界ではじめて成功した。また、分子軌道計算との比較により電子-分子内振動相互作用が物性に重要な役割を演じている事を見いだした。ピセン超伝導体の光電子分光研究は新聞にも掲載された(「超電導物質の電子構造解明」山陽新聞平成22年11月18日、「より高温で超電導も岡山大有機物の電子構造解明」日経産業新聞平成22年11月18日、「有機超電導物質産業への応用に光明」日本経済新聞平成22年11月22日)。高品質薄膜の作製が可能とされるホットフィラメント化学気相堆積法により、高濃度ホウ素ドープダイヤモンド超伝導体薄膜の作製に成功した。
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