2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20350002
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
常田 貴夫 The University of Tokyo, 大学院・工学系研究科, 准教授 (20312994)
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Keywords | 時間依存密度汎関数法 / 非断熱相互作用 / 電子状態間相互作用 / 光化学反応 / 内部転換 / 状態交差 / 無放射遷移 / 大規模分子計算 |
Research Abstract |
本研究は、励起スペクトルの高速かつ高精度な計算法として現在最も利用されている時間依存密度汎関数法(TDDFT)に非断熱相互作用や電子状態間相互作用を取り込むことにより、これまで理論的な解析が全くできなかった大規模分子の励起状態間遷移をともなう光化学反応の詳細な解析を可能にすることを目的としている。光化学反応は、電子状態ポテンシャルの交差付近部転換の主因となる非断熱相互作用の取り込みは必須である。本年度の「研究実施計画」には、1.TDDFTにもとつく非断熱相互作用の定式の導出とプログラム開発、2.電子状態間相互作用を補正的に取り込んだTDDFTの開発を記した。本年度、1については、化学において重要な役割を果たす分子軌道の変化を取り込んだ非断熱相互作用の定式を導出し終え、現在プログラム開発を行っている。簡単な分子の励起状態について試行計算を行ない、波動関数の核座標に関する勾配による厳密な非断熱相互作用値と比較した結果、非断熱相互作用値を少し過大評価することが分かった。現在、原因究明と問題解決に取り組んでいる。2については、状態間相互作用を補正したDFTを開発し、計算プログラムを開発して、CH2分子の電子相関エネルギー値の解析や2原子分子の解離ポテンシャルエネルギー曲線の試行計算を行なった。その結果、この理論はきわめてバランスのよい電子相関を与えるが、解離ポテンシャルについて定量的な曲線を与えることが難しいことがわかった。現在、この問題を解決するため、理論の改善に取り組んでいる。
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